扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2015年7月25日 
  • 金沢文学サロン月曜会、第3回「春琴抄」

金沢文学サロン月曜会、第3回の開催を迎えました。

 

場所は町屋を活かした古民家カフェ「FULL OF BEANS」です。

 

炎暑の金沢、涼しげな町屋で本をひろげてほっと一息。

参加者5名という少数編成ですが、参加者全員とじっくり話ができるというのは立ち上げ初期だからこその良い所かも。

課題は谷崎潤一郎『春琴抄』。没後50年を迎えた谷崎潤一郎、この日はちょうど誕生日の翌日ということで、タイムリーな選書となりました。

耽美派という触れ込みに最初は身構えがちな谷崎ですが、美しい語彙と句読点の少ない独特の文体を飲み込むと、意外にすんなり読めたという感想が多かったです。猫町倶楽部で取り上げられることの多い谷崎作品、これを機に初めて読んだという人から既に猫町で何度も読んでいる人まで、様々な角度からの意見が飛び出します。

 

目が見えないけれど美人で琴の天才である春琴と、我儘な春琴に弟子として尽くし続けた佐助の歪な関係をえがいた本作。

極端な性格の二人をめぐって、「もし春琴みたいな人がいたら」「もし佐助みたいな人がいたら」という想像をみんなで話し合います。

男性は佐助の気持ちを支持する人が比較的多いのに対し、女性陣の評価はちょっと辛口。

「実際にいたらちょっと重すぎる」「世話してくれるのはいいけど、細かすぎて疲れそう」、言われてみれば納得の正直な意見が聞けるのが読書会の面白いところですね。一言で愛とは言い難い不思議な距離感のまま連れ添った二人の関係については、倒錯した感情の書き方に谷崎らしさを評価する声が多かったです。

「結局佐助は春琴のどこに惹かれていたのか」というのが話の佳境。「師匠としての春琴の内面に感化された」と見る人もいれば「美貌に惹かれたイメージを盲目になっても美化し続けているだけなのでは」という意見も。ここまでくると作品への感想を超えて、読者それぞれの価値観や恋愛観が見え隠れします。

 

他の谷崎作品もたくさん読んでいる人からは谷崎自身の内面の成熟を指摘する声もあり、多層的に課題作にアプローチする読書会になりました。 盲目が大きなテーマとなっている課題作にちなんで、ドレスコードは「アイウェア」。 眼鏡でオシャレを狙ってくる人が多い中、ベストドレッサーはまさかのリラックマ。

アイウェアと言いながらも、目が見えなくなるアイマスクのほうが趣旨に沿っているという発想には納得かも。

 

まだ少人数の金沢会場ですが、北陸新幹線開通の影響もあって、夏の金沢は大いに活気づいています。

 

観光スポットとしても人気の高い金沢、読書会を機会に足を伸ばしてみては。

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