猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2016年3月13日(日)
- 金沢文学サロン月曜会 第7回「夢十夜」開催レポート
こんな夢を見た。
自分は金沢の街を歩いている。梅の花が綺麗に咲いて実に好い陽気だ。竪町の通りを行くと、静かな路地に一軒のカフェを見付けた。古民家を改装した様な洒落た建築で、店名は「FULL OF BEANS」とある。
這入ってみると落ち着いた雰囲気の店内に十人ほどの男女が集まり本を広げている。聞けば猫町倶楽部月曜会が読書会を行っているという。
金沢だけでなく、名古屋や東京から来た者までいることには吃驚した。今から夏目漱石が書いた岩波文庫の「夢十夜 他二篇」を読むと言われて、自分はそれを知っている気がした。
対象は「夢十夜」「文鳥」「永日小品」の3作品だが、「夢十夜」を中心に話が進んでいく。事前に章ごとの一言要約まで準備されていて張り切ったものである。
漱石が拵えた十の夢から各自が気に入った章について話すのだが、其々好きな夢がばらばらで面白い。十もあれば一つや二つ抜きん出たものがありそうだが、各自の好みがてんで違う。「この話が一番夢らしくて好きだ」という人があれば「いやその話が一番わざとらしいと思う」なんて忌憚のない意見が飛び交う。人間各々が見ている夢は同じでないのだから、そもそも夢らしさという定型が覚束ないのである。喧嘩になるかと思えば寧ろ感想の共有を愉しんでいるようで、自分は幾分か安心した。
個々の夢の話が落ち着くと、漱石自身への考察にも話が及ぶ。漱石の作品をすっかり読んで了ったという者もあればこれが初めての漱石という者もあり、色々な角度での意見が出た。漱石作品のなかでの「夢十夜」の位置付けの奇怪さや、漱石自身の気難しい癇性の話になり、思い切った議論が痛快だった。よく知っている人の話を聞いていると、今回の作品に留まらない広い知見を得ることが出来る。倫敦に出て広い世界を見た人物であるから、全貌を掴むのは容易ではなかろう。
月曜会にはドレスコードがある。今回は「和」が主題だが、直截に和服を着るのでなく、小物に和を織り交ぜてくる人が多くあった。それにしても、ドレスコードと関係なく猫耳を附けた怪しい男がいたのは甚だ奇観であった。最優秀賞には背広の男の付けたバッヂが選ばれていた。二本脚の灯籠が描かれていたので、あれは兼六園の徽軫灯籠であろう。いつか自分の目で見てみたいものである。
会が終わって全員で集合写真を撮った後も、参加した面々が浮き足立っている。何があるのかと尋ねれば、これから懇親会で宴席を設けるという。「さあ、せっかくの金沢ですから、美味しいお酒を飲んでください。」居酒屋で席に坐ると酒が運ばれてきて、なるほど酒も肴も旨そうなのは難有い。期待に胸を高鳴らせ、待望の杯に口を付けたところで目が醒めた。
文 トマス