扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

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関西文学サロン月曜会[文学]

  • 2016年9月3日(土) 
  • 関西文学サロン月曜会 第19回 G.ガルシア=マルケス「予告された殺人の記録」

本が好きな友人はいますか?

本についてとことん語り合える友人はいますか?

・・・・・・。
ふんふんふん。

ですよねー。
案外、いませんよねー。

学校や職場でそんな友人と出会えたら超ラッキー。でも、それって砂漠で米粒を見つけるのと同じくらい低確率。たいていは一人で黙々と読書していることでしょう。

友人おらん!
おらんぜよ!

でも、本について何かを語り合ってみたい。そんな思いがくすぶっている。かといって、こういった読書会に参加するのは結構勇気がいるもんです。

ですよね?
そうですよね?

あ! 今、あとワンクリックで申込確定だったのに戻っちゃったでしょ? 手震えてたでしょ? ほらー。勇気いるでしょ?

お気持ち分かります。
ええ、もんのすごい分かります。
僕も何回かやりました。

「ええい、なぜ申し込みまでたどり着けないんじゃー!」と一人喚いては、レポートの楽しそうな雰囲気を見て改めて勇気を奮い立たせ、再び申込画面に行くもののやっぱり撃沈。猫町倶楽部の存在を知ってから約三ヶ月はその繰り返しでした。

でも、勇気を出して1回参加してみてからは何だかんだで毎月参加しています。もっと早くに参加していればと大後悔。猫町倶楽部はね、面白いですよ! 大丈夫! 猫町倶楽部のメンバーは貴方を大歓迎してくれます!!

みんなー最初は、ひとりぼっち♪
でも参加したらーだいたい友達♪
オーイエー♪(ふざけてます)

というわけで、猫町倶楽部への参加をためらっていらっしゃる貴方にこそ! 是非このレポートは読んで頂きたい。一歩踏み出すきっかけになれば嬉しい。そんな思いで書きました。

え? 7月に開催されたビギナー限定読書会に参加出来なかった? 大丈夫! 毎回初参加の方が20%前後いらっしゃいます。自分のタイミングで始められるのが猫町倶楽部の良い所です。

では、前置きが長くなりましたが、開催レポートスタートです!

 

~予告された読書会の記録~

9月3日、関西文学サロン月曜会に初参加する日、A子は朝5時半に起きた。読書会は17時からだから、準備と移動にかかる時間を考えても15時くらいに起きれば十分だった。それなのに、まさかの5時半起床。早い。早すぎる。

夢を見たせいだった。この日、A子は珍しく夢を見ていた。夢の中では束の間の幸せを味わったものの、目が覚めた時は、身体中に鳥の糞を浴びた気がした。

A子は15時過ぎに家を出たのだが、それから7時間後、月曜会が終わるまでに出会った人々は、彼女がいくらか眠そうだったが機嫌はよかったことを覚えていた。


 


 

受付係のB子は、A子と月曜会で最初に挨拶を交わしたのは自分であると、わたしに語った。彼女に名札を渡したのもB子だ。A子は受付開始時刻である16時半ちょうどに読書会会場であるoinai karasuma/おいない烏丸へとやってきた。アナウンス後、A子は名札に自分の名前(その日呼ばれたい名前、ニックネームでもOK)を書き、Yテーブルへと向かった。

D男は、Yテーブルの中で彼女と最初に挨拶を交わしたのは自分であると記憶している。この日、D男はファシリテーターを務める事になっていた。ファシリテーターとは司会進行役のことだ。各テーブルに1名おり、参加者一人一人が楽しく落ち着いて会話が出来るような雰囲気を作り出したり、バランスよく発言を促したりして参加者をサポートする。

やや緊張しているA子を見て、D男は自分が初めて参加した日の事を思い出した。今はそうでもないが、D男自身も初参加の時は緊張したものだ。手が震えた。声が震えた。仕事仲間と無性に会いたくなって会いたくなって会えなくて震えた。A子もきっとそうに違いないと思ったD男は、彼女に対してフランクに話しかけた。他のメンバーも徐々にやって来て、Yテーブルには6人が揃った。6人でいくつかの雑談を交わしていると、17時になったのを機に入口付近に立っていたE男が声を上げた。会場が静まり返った。

 


 

E男は司会者だ。猫町倶楽部には厳しいルールがあるわけではないが、一つ大切なルールがある。「他の人の意見を否定しない」という事だ。皆が楽しむための大切な優しいルールだ。皆に耳を傾けてもらえるよう、少しゆっくりめに、しかしながらやや強調した声でE男はアナウンスした。うんうんと頷きながら聞いてくれているA子の姿がE男の視界に映った。

いよいよ読書会が始まった。

どのテーブルもまずは自己紹介から始める。Yテーブルのトップバッターに指名されたのはF子だった。F子から時計回りに自己紹介することになった。
いつもの恵文社だったら丸いテーブルなのだが、今回の会場では四角いテーブルだった。そのため、3人と3人が向かい合って座っている。F子の正面にはA子が座っている。左隣はG男だ。時計回りという事はF子の次がG男、その次がD男となる。A子は最後だ。

 


 

F子はこれで5回目の参加だ。初参加の時だっただろうか、誰かから「3回参加してくれれば猫町の良さが分かる」と聞いた。ほんまかいなと思いながら次月も参加してみたら実際一回目よりも緊張はしなかった。回を重ねる毎に顔馴染みも増えてきて楽しさも増した。課題本を読了してくるというハードルを乗り越えてきているからか、不思議と誰とでも会話が広がるのだ。自己紹介も最初の頃は上手く出来なくて悔しかったが、今ではすらすらと出来るようになっている。名前や参加回数、参加するきっかけ、(差し支えなければ)職業、好きな作家や本などを話し、課題本についての感想を述べた後、次の人にバトンタッチした。

次に自己紹介をしたG男は、10代20代の頃はほとんど本を読まない男だった。読み始めると3秒で瞼が重くなるほど苦手だった。30歳になったのを機に「それではいかん」と一念発起してみたら案外読書が楽しい事に気づいた。読めるようになった自分は大人になったのだなあとしみじみと実感した。しかしながら同時に読書は孤独である事にも気づいた。読書が趣味にはなったものの、その趣味を共有してくれる友人が周りにいなかったのだ。月曜会に参加したキッカケをG男はこのように話した。まだ参加回数が少なかった頃、包み隠さず話してみると同じような人が案外多く仲良くなれたからだ。以来、G男にとってはこれが定番の自己紹介となっている。G男がA子に視線をやると、彼女も共感してくれたのか何度も頷いていた。

Yテーブルの中ではA子が一番最後の自己紹介だった。隣で耳を傾けていたH子は内心ホッとした。実はH子も月曜会は初参加だったのだ。Yテーブルで一緒になった人たちとは誰とも面識がなかった。A子が好きな作家としてあげた名前の中にH子も好きな名があった。思わず「私も好きです!」とH子は身を乗り出して言った。A子も嬉しかったようで、好きな作品名をいくつかあげてくれた。F子も好きな作家だったようで話に便乗してくれた。男性陣には馴染みのない作家だったようだったが、H子たちが語るうちに少し興味をもってくれたようだった。

今回課題本となったG.ガルシア=マルケスの「予告された殺人の記録」について、皆が感想や疑問点を話し合った。

「サンティアゴ・ナサールは、村の秩序を守るため犠牲になった」

「登場人物にあまり人間味を感じないのは、記録として書かれたものだからそういう表現になった」

「アンヘラ・ビカリオは一番したたか」

「バヤルド・サン・ロマンみたいに金持ちになったら、何にお金使う? 同じように女性にアプローチ出来る? 女性側はされたらどう思う?」

「アンヘラはサンティアゴのことが好きだったから、何もされていなかったのに嘘を言ってしまったのではないか」

「男性優位のマッチョな世界は現代にでも通じるところがあるのでは?」

「朝5時半起床は早いと思った」

いろんな意見が飛び交う中、I子はお菓子を食べていた。I子は月曜会で出てくるお菓子が好きだった。毎回、作品に合わせたお菓子が出てくるのだ。ブラジル産のウエハースにスペイン産トルティーヤ、バラのフィナンシェにチョコレートと今日出てきたお菓子もとても美味しい。美味しいなあと思って食べていると、D男の向こうにいるA子と目が合った。I子が微笑むと彼女も微笑んだ。I子はカクテルにも口をつけた。

 


 

J男は19時になるのを今か今かと待ちわびていた。J男が毎回最も力を入れているのはドレスコードだからだ。もちろん読書会自体も楽しんでいるのだが、これを見せたくてたまらない。

月曜会には毎回本にちなんだテーマのドレスコードがあり、参加者は自由な発想で楽しんでいる。今回のテーマは「ラテン」だった。J男はバラを用意していた。紙袋の中にしまって足元に置いている。発表の時には口にくわえてみるつもりだ。これでYテーブルのベストドレッサー賞は自分のものだ。J男は確信していた。D男の足元にある紙袋には、この時まだ気づいていなかった。

あっという間に時間が過ぎ、各テーブルでベストドレッサーを決める事になった。それぞれ自分が良いと思った人を一斉に指さし、多数決で決定した。

 


 

司会者のE男の隣に各テーブルのベストドレッサーが並び、記念撮影をした。写真NGの方は本等で顔を隠して頂いている。

J男は落胆していた。今回もベストドレッサーには選ばれなかったからだ。J男がバラを見せた時、恥ずかしそうにD男も紙袋から何かを取り出して見せた。自分と同じバラだった。まあ、そんな事も時にはあるものだ。それにしても、ベストドレッサーに選ばれた6人のドレスコードにJ男は驚いた。特に葦で作られた管楽器、サンポーニャの音色は綺麗だった。次回こそは選ばれるぞ、とJ男は自分に気合いを入れた。


ベストドレッサーたちの撮影が終わった後、E男が言った。

「次回は10月1日(土)、課題本はW.Wジェイコブ他のエドワード・ゴーリーが愛する12の怪談です!場所は恵文社です」

次回の読書会が、ここに予告された。
わたしは持参したノートに記録した。

最後に集合写真を撮って読書会は終了となった。

 


 

さあ、ここからは懇親会だ。

皆で片づけをして、懇親会会場であるアオゾラオソラへと向かった。京風イタリアンのお店だ。

 


 


 

A子と隣の席になったわたしは、酒を飲みながら彼女と楽しく会話を交わした。彼女は今朝5時半に起床した事や夢の話をわたしに語ってくれた。わたしはわたしで、彼女に対して猫町倶楽部の面白さを若干熱く、いやかなり熱く語ってしまった。

たとえ難しい本でも、年齢・性別・職業など様々な人の意見を聞くことによって、思いもしなかった発見をすることができる。一人で黙々と読書しているだけでは決して出来ない体験である。

話し足りない事があったら関西文学サロン月曜会のmixiコミュニティの「話し足りん」や「はじめまして」を覗いてみると良い。いや、話し足りない事がなかったとしても、とりあえず覗いて見ると良いだろう。その次には猫町倶楽部課外活動(関西)という世界も待ち受けている。次に行く時にはきっと顔見知りが増えていて楽しさ倍増だ。せっかく一歩踏み出したのだから、もう半歩ぐらいでも踏み出してみると知らない世界が開けてくるよ。1回参加しただけでは分からないのだから、騙されたと思って2、3回来てみて。

そんな事を彼女に語ったような気がするが、わたし自身だいぶ酒が回っていたので彼女がどんな表情で聞いてくれていたのかは覚えていない。

22時に懇親会が終わり解散となった。

ここから3次会へと突入する人たちもいる。まだまだ猫町倶楽部の夜は続くのだ。だが、無理する必要はない。楽しければ参加。それで良いのだ。

・・・・・・さて、数日かけて幾人かの証言を集め終わった後、わたしはあの日の出来事を記録した。

予告された次回の読書会に、果たして彼女は来てくれるだろうか。

あの日、彼女は眠たそうではあったが、決して不機嫌ではなかったはずだ。だが、周りの証言をいくら集めても彼女自身の心情を知る事は出来ない。

ただ、証言してくれた人たちの心情ならば聞かずとも分かる。また来てくれたら単純に嬉しい。皆、彼女と再び会えるのを心待ちにしている。もちろん、わたしもその一人だ。

 

・・・・・・あ、そうそう、余談ではあるが、A子とわたしが会話を交わしたのは懇親会の時だけだ。読書会では違うテーブルだった。わたしが座っていたのはXテーブルだ。

この記録に出てきた人物たちの中でYテーブルのメンバーじゃなかった者は、わたし以外にも何人かいる。

さて、分かるかな?

あ、いや、本音を言えば証言者を集めすぎてわたしにも分からなくなってしまったのだ。まとめるにも時間がかかるしな・・・・・・そうだ、あとは貴方に任せよう。この記録に登場した人物は、わたしも含めて10人。つまり、わたし以外にも3人が、読書会でYテーブル以外にいた人物だ。

答え合わせはmixiの方ででも良いし、今度読書会でお会いした時にでもしようじゃないか。うん、それが良い。そんな楽しみがあっても良いじゃないか。まだ見ぬ貴方とわたしたちのこれが接点となるかもしれない。ほら、「あのレポートの答えって何だったんですか?」って誰かに声かけやすいだろう? ね、それが良い、そうしよう。

それじゃあ、後のことは貴方に任せる。

わたしは安心して眠ることとするよ。

グッナイ。

 

~完~

 

以上、開催レポートでしたー!!

次回は10月1日(土)

課題本はW.Wジェイコブ他のエドワード・ゴーリーが愛する12の怪談です!

ドレスコードは「ゴースト」です。

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皆様のご参加をお待ちしております!

 

文章:のり 写真:タクミ、ゆうみ

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