扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2016年9月17日(土) 
  • 第12回  金沢文学サロン月曜会 「濹東綺譚」開催レポート



第12回 2016年9月17日(土)、お馴染み片町のfull of beansにて
記念すべき第12回金沢月曜会定例会を開催いたしました。
前回は第11回ということで素数の話をした、という話を
最初にしたら「完全数」やら「友愛数」の話から
いきなり小川洋子の「博士の愛した数式」の話しへ(謎

ちなみに、完全数とは、その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数のことで
例えば 6 (= 1 + 2 + 3)、28 (= 1 + 2 + 4 + 7 + 14) です(余談

9月の課題本は「濹東綺譚」(岩波文庫)(著者:永井荷風)です。
ちなみに「濹」の字がいわゆる機種依存文字なので
以降は誰にでも表示される「墨東綺譚」を使用します。





読書会の前にはリーダー兼受付兼会計兼ファシリテーターが
本のあらすじのおさらいや話題になりそうなポイントや疑問を考えています。
そのため、初めての方がいらしても、安心してご参加いただけます。
ちなみに今回の参加者の内訳は
男:女比は3:1
居住地別では石川:富山:東京が2:1:1でした。
遠征サポさんありがとうございます。
人口比の割にはそこそこなのです(金沢市は人口46万人)。

初対面の方も毎回多くいらっしゃいますので、
まずはお互いの自己紹介をしてから読書会スタートです。
最近普通二輪免許を取り始めた話やら。





今回は永井荷風の「 墨東綺譚 」です。
向島の玉ノ井にある私娼窟を訪れた小説家の大江匡が、島田の頭をしたお雪を見染めていくお話しです。
永井荷風の最高傑作と呼ばれるこの作品、文章のうまさもさることながら、情景描写のあちこちに散らばる江戸情緒が最高です(私見です)。


まずは、永井荷風の分身である大江匡に話題は集中しました。
劇中劇の種田順平にも通じる強さと情の薄さ。
例えば、「交番の警察官に問い詰められるシーンでは独身なのに妻子持ちを演じる強さに対して
それでいてお雪に対しては、結婚を申し込まれたら別れる算段をするなど添え物のようだ」という意見もあれば
「別れた後も未練がましく相手の様子を見に行くなど、男のほうが実は情が深いのでは」と真逆の感想が聞けました。
また「お金持ちの老人なんかは、高級な風俗ではなく場末の風俗を好むのでは」などと少し吹っ飛んだ意見も飛び出しました。


「永井荷風自体は、同時期の作家に比べて主流ではなくどちらかというとアウトロー側」という文学史背景食いの感想や
「小説には何度も「震災後」と「関東大震災後」であることが強調されている。
きっとこの時代の人たちにとって我々の東日本大震災と同様に、大きなパラダイムシフトがあったのだろうなぁ」という時代背景食いの感想も出てきました。


また川端康成との比較で読む人も多く、「雪国」は都会の男とが田舎で遊ぶ話し、
「墨東奇譚」は都会の人が都会で遊ぶ話などと比較をする感想や
鼻もちならない康成に比べて永井荷風は女と別れるフェードアウトがうまそう(あくまでも個人の感想です)など
勝手に作者の別れ方まで突っ込んでいました。





赤線や堕胎率、結婚に対する考え方など、恋愛小説にありがちな
「最初は本の話をしているのに、いつの間にか自分自身の話をしている」傾向が強く
自分が一人で読んでいたら決して思いつかない話にたくさん出会えました。

猫町倶楽部唯一のルールは「他人の意見は否定しない」です。
これさえ守っていただければ話す内容はどこまでも自由なので話題は尽きません。

読書会が終わるとドレスコードの紹介です。
今回のテーマは「昭和レトロ」ということで、
昭和風のワンピースや甚平、丸眼鏡など思い思いの昭和に浸りました。

今回から意識して写真を多く撮りたいと思っております。

パチリ





懇親会は、 名古屋・東京・関西のシネマテーブルと合同で行いました。
20人を超える懇親会って金沢月曜会ではなかなかないのでとても楽しかったです。

次回の定例会は10/22(土)南アフリカ出身のノーベル文学賞作家、
ジョン・マックスウェル・クッツェー「恥辱」です。おたのしみに。
みなさまのご参加お待ちしております。

どっとはらい

文 ふくしげ(アピール下手)
写真(撮影) Sさん、ふくしげ

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