猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 4月22日(土) 16:30~
- 福岡文学サロン月曜会第十四回『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)』坂口安吾著
2017/4/22(土)、課題本は「桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)」でした。4月、桜を連想した上での課題本でしょうか。
残念ながら桜の時期はすでに過ぎ去り、桜の木の下を歩くと毛虫が落ちる時期の開催となりましたが、いい天気に恵まれ初参加者の方も加わり、盛り上がった定例会となりました。
福岡文学サロンの特徴は、結構遠方から来るメンバーが多いことでしょう。遠くは熊本、大分、北九州と時間をかけまた急に仕事が入って来れなくなったメンバーもせめて顔だけは、とのことで寄ってくれたり、その気持ちが嬉しいですね。
猫町倶楽部の基本ルール、「否定しない」を説明した後に、自己紹介。
最近読んだ本と課題本の中で一番お気に入りの作品を発表してもらいました。
思ったより作品の傾向が分かれたので、それぞれベスト3を選んでもらい、票が多かった作品から話し合いを進めることにしました。
例えば、4位の「傲慢な眼」について、この作品を読んで、女性、少年どちらかの片思いなのか、それとも両思いなのか、多数決をとりそれぞれ、根拠となる描写、またはメンバーの経験から、激論がくりひろげられましたし、5位の「姦淫に寄す」でも、女性は仮病を使ったのではないか、これはプラトニックの不倫関係ではないかと様々な憶測が跳び、人によって様々な捉え方を与える坂口安吾の小説の豊かさを感じました。
時代背景については、主に男性の参加者が当時の時代について興味深く読んだという意見が出されました。この文庫は最初の「風博士」から最後の「夜長姫と耳男」まで二十年経っており、年代順に並べられていたから風博士の時代と戦時下、戦後の人々の心の移り変わりを見出すことができたのもしれません。
最後の「幻想性」は主に「桜の森の満開の下」でまるで初めの口上からラストシーンまで一つの劇を見ているよう、主人公の山賊の周りにはたくさんの妻がいたが、首狩りという行為に依存し、その行為に果てがなくなってしまった男の強烈な孤独が桜を使ってよく描写されている等の意見が出ました。
また「人間の描写」については、坂口は全編においてグロい描写が多い(特に「桜の~」)、その中で「白痴」については男性主人公の気持ちのゆらぎがリアルで、人間を極端に斜めから見ているものの人間を露悪的に描くことで逆説的に人間の聖性、美しさを見ていたのではないか等々…皆、語りたいことが一杯あったのか、所定の時間内では全部の作品を回ることができず、そのまま懇親会へ流れていきました。
最後に、作品だけではなく、本の編集についての感想も出ました。
今回の課題本には坂口安吾の短編、14編が収録されています。
解説を見ると、「自伝的作品を除く純文学および幻想文学の代表作」が収められており、例えば、私に坂口安吾の作品では「戦争」と「恋愛」が好きで「白痴」から「続戦争と一人の女」までの並びを特に楽しく読みました。
しかし、「続戦争と一人の女」から「櫻の森の満開の下」にごろりと趣向が変わると「おI?」とこれから先まだ何かあるのか?とページを進めたくなってしまう。それから「青鬼」ときて「アンゴウ」。「アンゴウ」は「青鬼」に続き、戦時下の男女関係ものかなと思ったら最後で(ネタバレになるので自重)どんでん返しをくらう。
坂口安吾は多作の作家でかつ著作権が切れていますので、現在440本の作品が 青空文庫にあげられて、すべて無料で読むことができます。
読書というものは基本的に極めて個人的な営みです。 しかし、自分の中で新たな読み方、そして読書会でその気付きを共有したことで、本の内容だけではなく「人の手で編集した本」について思いを馳せることができたのは、「読書会」という場があったからこそと思いました。
ベストドレッサーはこの御方。ドレスコードは「ピンク」。
ピンク×ピンクの組み合わせですが、なんということでしょう!こんなに華やかに!
最後は懇親会~❤
読書会からの全員参加で、 課題本で話し足りないところや、それぞれの最近のおすすめ本等、とても有意義な時間を過ごせました。
次回の定例会は、5/20(土)、課題本はサン=デクジュペリの「人間の大地」です。
課題本は新潮文庫と光文社古典新訳文庫、どちらでもOKです。 多数のご参加をお待ちしております。
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<文責・写真 のuこ>