猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017/4/22 16:00から
- 金沢月曜会 第18回 三島由紀夫『春の雪』
「今、夢を見ていた。又、会うぜ。きっと会う。滝の下で」
そんなセリフで始まったとか始まっていないとか(始まっていません)
2017年4月22日(土)、お馴染み片町のfull of beansにて
記念すべき第18回金沢月曜会定例会を開催いたしました。
(毎回記念しているというツッコミはもはや無用です
4月の課題本は「春の雪」(出版社問わず)(著者:三島由紀夫 )です。
選書の理由は、ずばり「春」が入っているから。
あらすじを書くと
維新の功臣を祖父にもつ侯爵家の若き嫡子松枝清顕と、伯爵家の美貌の令嬢綾倉聡子のついに結ばれることのない恋。矜り高い青年が禁じられた恋に生命を賭して求めたものはなんだったのか(新潮文庫)
読書会の前にはリーダー兼受付兼会計兼ファシリテーターが
本のあらすじのおさらいや話題になりそうなポイントや疑問を考えています。
そのため、初めての方が参加していても、安心してご参加いただけます。
ちなみに今回の参加者の内訳は
男:女比は3:2
ほぼ常連の神奈川県の常連さんもいらっしゃってとてもにぎやかになりました。
【課題本の感想について】
まずは明治時代の恋愛観について、ずいぶんとエネルギーのはけ口が内向きでむずむずするという意見がありました。確かに文中に何度も登場する現代劇にはない奥ゆかしさと恥ずかしさは今の感覚からするとリアリティがないようにうつる部分もありました。
もちろん、そこが本作のよいところでもあるのですが。
また、侯爵家、伯爵家という狭い世界を舞台にしている割には、シャムの王子が語る宇宙世界の話、とそれらのギャップと青年期にありがちな頭でっかちの情熱は、誰しも若い時の通過儀礼なのかもしれませんね。
いわゆる処女性の観念について意外に盛り上がりました。
曰く、庶民は子供を労働力として位置付けていたので「でき婚」は歓迎だったとか。
自分自身の固定観念があったせいか、びっくりした一幕でもありました。
今回のドレスコードは「伯爵・貴族」。
神秘的な水晶だったり、シャム王子から連想する服装だったり、と、皆さん遊び心いっぱいの衣装でした。
なお、今回は参加者の方からの感想も一部抜粋してお送りします。
【参加者の感想(抜粋)】
まず、素朴な感想ですが、三島由紀夫さんには男性にディープなファンが多いと実感し、
私にとってそれはとても興味深いことでした。
私自身は、『春の雪』は20年ぶりの再読だったのですが、
前回読んだときは、若かったこともあって、
純愛物として読んでいたことを思い出しました。
それでもイデア先行の作風という印象は拭えないのですが、
みなさんのお話を聞いてから、自分が四部作とも読んでいるから特にそう思うのだと気付きました。
私は、三島作品が苦手な理由として彼特有の悪意があるのですが、人工的な感じがするからなのだろうかと思い至りました。
いずれにせよ、結末が決まってから書き始める人、筆が走って収拾がつかないというタイプではなく、
全てが作家のコントロール下にあるという印象は変わりません。
ただ、いま現在、彼の通俗小説といわれている作品に興味があり、近いうちに読んでみようと思っています。
「ほんとにみんな美しいの?」作品の登場人物は皆、外面は美しく描かれていましたが、
それが本当なのかを問うた、ある参加者の発言から、作品への新たな視点をつかめたと思います。
皇族だったり平安から続く名家だったり維新の功臣の子孫だったりと、
出てくる人々は上流階級ばかりですが、その中でだけ通用する美しさなのかもしれませんね。
作中に出てきた「ミクロコスモス」という表現に、まさに当てはまると思います。
そのミクロコスモスが、輪廻転生という点で、宇宙の法則であるマクロコスモスとつながっていたり、包摂されたりしている。
東洋、特にインドの哲学を背景とした雄大な世界観に、読んでいて心地よさを覚えました。
他には「風景と心理描写が実にうまい」「一本気な人が報われないのが三島文学の特徴の一つ」
「誰の前で涙を見せるか、という事実にその人間同士の関係性が表れている」
「学習院の学生は無試験で帝大に進めて、いいなあ」などの指摘に、
それまで漠然ととらえていたことに気づかされるような感じを受けました。ありがとうございます。
表現が濃密すぎて三島が紡ぎだす言葉の海に溺れかけましたが、なんとか当日読了できました。
悲恋の純愛ストーリーの一方華族階級のどろどろした昼ドラのような関係も面白かったです。
読書会では四部作の第一巻と読むか、単独巻として読むかで印象が異なるようでした。
私は続編は未読なので、四部作読破した方の予告編エピソードに興味津々でした。
シャムの王子の話など本作では唐突な感じもありましたが、続編があると思うとなるほどと。
エピソード1で止まらず、是非全篇読破したいです。
今回も自分が一人で読んでいたら決して思いつかない話にたくさん出会えました。
ありがとうございました。
猫町倶楽部唯一のルールは「他人の意見は否定しない」です。
これさえ守っていただければ話す内容はどこまでも自由なので話題は尽きません。
パチリ
なお、懇親会は犀川のほとり、紙屋さんを改装したお店でした。
金箔入りの料理も出てくるなど、金沢らしいお店に皆舌鼓を打ちました。
次回の定例会は5/27(土)、の「一九八四年」です。
みなさまのご参加お待ちしております。
どっとはらい
文 Mさん、Iさん(女性)、Iさん(男性)
ふくしげ(アピール下手)
写真 Iさん(男性)