扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2017年5月27日(土) 
  • 金沢月曜会 第19回 ジョージ・オーウェル『一九八四年』

「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」

2017年5月27日(土)、お馴染み片町のfull of beansにて

憎悪週間ではありませんが、記念すべき第19回金沢月曜会定例会を開催いたしました。

今回からネームプレート及び名刺サイズの紹介文導入です。
がんばって作成しました。








5月の課題本は「一九八四年」(ハヤカワepi文庫)(著者:ジョージ・オーウェル )です。
昨年末のアメリカ大統領選をはじめとして、世界が全体主義に傾いているとささやかれる中、いま正にこの本のような状況が始まりつつあるのではないでしょうか、という最もらしい理由をつけていますが、単に名作なのに読んでいなかったという引け目から選書しました。
訳者によると英国で「読んだふり本」第一位という、知ったかぶりしたがる本でもあります(笑




あらすじを書くと
ビッグ・ブラザーが率いる党が支配する全体主義的近未来。
真理省記録局に勤務するウィンストン・スミスがあるとき、奔放な美女ジュリアと恋に落ちる。
(ハヤカワepi文庫)

読書会の前にはリーダー兼受付兼会計兼ファシリテーターが本のあらすじのおさらいや話題になりそうなポイントや疑問を考えています。
そのため、初めての方が参加していても、安心してご参加いただけます。
ちなみに今回の参加者の内訳は
なぜかほとんどが初参加者という不思議な回でした。
中には「auのポータルサイトで読書会を知りました」という声も。



【課題本の感想について】
まずは、話題になったのは「これはハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか」という点でした。
最終的にスミスはオブライエンに切り捨てられるのでバットエンドという意見もあれば最後は「ビッグブラザーを愛するのだからハッピーエンド」という意見や「党からすればハッピーエンド」なんて全体主義的な意見も(笑


少なからず今の日本と重ね合わした感想もありました。
防犯カメラやNシステム、スマホの位置情報とテレスクリーンの世界の道具は姿を変えて、すでに私たちの世界にあるのではないか、怖いね、という感想に、みなドキドキしながらうなづいていました。


また、ヒロインであるジュリアは「性的に奔放な」存在であり、いわば人間の本能なのでその本能によって、全体主義に疑問を持つきっかけになる流れはまだ希望が持てる、という感想もあり本当に読む人によっていろんな感想があるのだなぁとしみじみと感じました。

なお、今回「も」参加者の方からの感想も一部抜粋してお送りします。





【参加者の感想(抜粋)】
今回のオーウェル「1984年」、文庫で500ページを超える大作でしたが、興味深く読むことが出来ました。
今回は初参加の方も多く、盛り上がった会になったと思います。
今回、2班に分かれたうちの1つで進行役みたいな役割を務めさせていただいたのですが、参加者の皆さんが感想を活発に述べてくれたので、言葉が途切れたときに話を振るぐらいでした。

私の班では「どこかに突破口があると信じたいので、主人公に共感した」、「視点を逆転させて党から見たらこれはハッピーエンドは」、
「団結させるけど分断することの両立」、『夜と霧』で、収容所から生き延びたフランクルの強さ、などの感想が出ました。

ビッグ・ブラザー崇拝から、話が皇族への不敬罪について展開したりも。

参加者の中には、A4の紙一枚に概要や感想などをまとめたレジュメを印字してきた方もいて、そのやる気に感服しました。

「1984年」ですが、個人的には、大学一回生の時に受けた一般教養科目「政治学基礎論」で、夏休みのレポートの課題図書として旧訳版を読んだことがありました。
18年の時を経て、今回は新訳版を読みました。
もちろん話の細部はすっかり忘れていたため、未読の本のように向かい合うことが出来ました。

今回、「1984年」の関連書として、以前からタイトルだけ知っていて気になっていた、

ハクスリー「すばらしい新世界」を自主的に同時並行で読みました。

これにより、「1984年」とディストピアの描き方を比較検討できて、より深く作品の世界に触れることができたように思います。

「すばらしい新世界」のほうがユーモアにあふれていて、ある種の牧歌的な感じもあり読みやすかったです。

「すばらしい新世界」で最も面白かったのは、終盤に世界統制官と野人がお互いの考えや信じることをぶつけ合う対話の場面でしたが、
「1984年」でも、終盤のウィンストンとオブライエンの拷問における対論のシーンが、二人の生々しい感情や人間性が露骨に出ていて、スリリングに読めました。

今回も自分が一人で読んでいたら決して思いつかない話にたくさん出会えました。
ありがとうございました。

猫町倶楽部唯一のルールは「他人の意見は否定しない」です。
これさえ守っていただければ話す内容はどこまでも自由なので話題は尽きません。

パチリ





次回の定例会は7/1(土)、の「ガリヴァー旅行記」(岩波文庫:スウィフト)です。
みなさまのご参加お待ちしております。

どっとはらい





文 まるごと、ふくしげ

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