猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017年7月1日(土)
- 金沢月曜会第20回『ガリヴァー旅行記』
金沢は今年一番の荒れた天気でしたが、
今回も無事お馴染みの古民家カフェ『full of beans』にて、
第20回目の金沢文学サロン月曜会が開催されました。
課題本は『ガリヴァー旅行記』(岩波文庫)(著:スウィフト)です。
子供の頃に絵本などでガリヴァーの物語に触れたことがある方は、
小人の国や巨人の国に迷い込んだガリヴァーの冒険譚という
イメージをお持ちではないでしょうか。
しかしながら、文庫本の表紙にある紹介文のとおり、
改めて大人になって読むと社会や人間に対する深い洞察と
鋭い風刺の効いた内容で、子どもの頃とずいぶん違った読み方ができて、
とても楽しめる作品だと思います。
さて注文したドリンクとデザートが届いたら、読書会スタートです。
デザートをいただきながら本の印象についておしゃべりをするのが、
金沢文学サロン月曜会のスタイルです。
ちなみに、今回のデザートはこちら。(このあと、おいしくいただきました。)
冒頭はファシリテータのふくしげさんから月曜会の説明があったあと、
全員で自己紹介。今回の参加者は6名で、
中には金沢に旅行で来られていた方もいらっしゃいました。
読書会が始まると、ファシリテータの方から本のあらすじや
時代背景をさらっとおさらいしてもらえるし、
話題になりそうなポイントを考えていてくれるので、
初めての方も安心して参加していただけます。
また同じ課題本を読み終えてくるというたったひとつの参加条件がありますが、
それが参加者の共通の経験になるので、お互いにすぐ打ち解けられます。
さて、読書会の内容ですが、今回もいろいろな話題について話しました。
全く同じ物語を読んでいるのに人によって読み方や感想、
突っ込みどころが全然違ってるところが面白いですね。
・ガリヴァーはすぐに家族をおいて旅に出るけど、何を考えているのかな(笑)
これだけ頻繁に海上事故に遭っているのに全く懲りてないよね。
・海に出ることにしてから、不思議な世界に迷い込んで、言葉を覚えて、
権力者に気に入られるという『型』をうまく使われてるけど、
だんだん、書き方が雑になってるような気が・・・。
しかも旅から戻って家に帰るところも、展開の都合が良すぎ。
・小人の国、巨人の国の部分と、馬(フウイヌム)の国の部分で
書き方・印象がずいぶん違ってて、全く別の作品みたい。
・バルビバーニで国民が企画・研究に取り組んでいて、
生活が放置されている様子をよんで、会社の仕事でも
無駄なことに翻弄されたりするのに似ていると感じた。
・ガリヴァーにとってフウイヌムはある種のユートピアで
とても居心地が良かったのに追い出されることになってかわいそうだ。
・一度、アドベンチャーものとして読んで、
次に社会批判・風刺作品として読んだあと、
もう一周回ってアドベンチャーとして読んでも
それはそれで楽しめる良い作品だと思う。
読書会は約2時間ほどの時間ですが、
話しているとあっという間で話題は尽きないですね。
この本を読みきって、読書会で語り合った人は、
文庫のガリヴァー旅行記を読んでいない方にきっとこう言うでしょう。
「あなたの知っているガリヴァー旅行記は、
本当のガリヴァー旅行記ではないかもしれないですよ。」
今回も参加者の方の感想を抜粋します。
人間や国家のあり方を徹底的に風刺し呪う警世の書であり、その一方で後世の創作に多大な影響を与えた優れたファンタジー。
「ガリヴァー旅行記」を、岩波文庫表紙に書かれた“おとなの目”で読むとすれば、この本が持つ二重の凄さが見えてきたような気になりました。
第1の点については、特に馬の国の第4章で人間性や理性への徹底的な懐疑、ある種の原始的な政治制度・共産主義的なシステムへの礼賛がこれでもかと描かれていましたが、その向こうに透けて見えてくる愛国心に、筆者の一筋縄でない執念が感じられました。
第2の点について、小人、巨人、天空人、学者、降霊、不死、馬の国・・・。後世の作品に使われたり、インスパイアしたりした、魅力的なモチーフがいくつも。自分が最初に見た映画版ドラえもんは「のび太の宇宙小戦争」でしたが、これは小人の国の話でした。
直接的あるいは間接的にガリヴァー旅行記の影響をどこかで受けているわれわれは、まさしく「ガリヴァーの子どもたち」なのでしょう。
読書会で出された「ガリヴァーの家族はどう思っていたのだろう?」「家族側からのアプローチは?」という感想について考えてみると、家族を祖国に残して4度も航海に出たガリヴァーの好奇心や安住しない姿勢には目を見張るものがあります。
ですが、それ以上に、作中にはあまり描かれていない家族の献身、特に妻の献身があったのではないか、と思います。
16年もの長きにわたり、消息不明のガリヴァーに代わって家を守り続けた妻。
その日々の記録は「ガリヴァー妻の日記」として、立派な1冊の本になりうるのではないか、と想像します。
ガリヴァーから妻への思いは、作中にはあまり出てきませんが、思いが大きすぎるからこそあえて語られなかった、と勝手に推測。これも「ガリヴァー恐妻記」として立派な1冊の(以下繰り返し)。
最後に課題本を持って記念写真をパチリ。
次回は、松尾芭蕉の「おくのほそ道」です。
皆様のご参加お待ちしております。
文 まきしむ 写真 まるごと 編集 ふくしげ