猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017年8月20日(日)
- 福岡文学サロン月曜会第18回『腕くらべ』永井荷風
お盆を過ぎ、蝉の声が段々か細くなる時期ですが暑さはまだ続く8月20日、二年目となる福岡猫町倶楽部で二回目の浴衣読書会が行われました。
場所は、福岡市の中心街天神にある警固公園、古くから福岡の地にたつ由緒ある神社です。
警固神社の「神徳殿」にある「貴徳」が今日の会場です。
今日に限っては、全員浴衣姿です。
今日のために浴衣を新調した、初めてレンタルした、初めて自分で着付けしてみた……、一つの本が、参加した方々の新たな経験のきっかけになる、これも猫町倶楽部恒例、浴衣読書会の醍醐味です。
今回の課題本、永井荷風の「腕くらべ」(岩波書店)は版元絶版、青空文庫もまだ、ということで入手が難しかったようです。またネット書店で中古本を手に入れても、旧版で全部旧仮名遣いで読みにくかった!という声も。
それでも、猫町倶楽部のルール、「課題本の読了」をしっかり守り、皆、細部まですごくきちんと読み込んでいるようでした。話し込んでいるうちにあっという間に二時間がたったような気がします。
「腕くらべ」は、小品ながらも永井荷風の中期の代表作の一つと言われ、大正時代の花柳界を舞台に、身請けされた旦那の死後、20代半ばを過ぎて再び稼業に出戻ってきた新橋芸者の駒代(こまよ)の恋とそれをとりまく花柳界の人々を描いています。
物語は、駒代が帝国劇場の廊下で7、8年前に昵懇であった吉岡と偶然出会うところからはじまります。駒代がいる新橋は、古い芸者気質の残る柳橋とは違い、江戸から続く「粋」や「人情」が廃れ、新しい価値観を持つ人々が台頭してきます。
肉体を武器に次々と男と寝て、隠すことなくそれをあっけらかんと話すが、どこか憎めない所のある売れっ子の菊千代、自分の器量を弁え上手な立ち回りを演じる花助、次の金持ちの旦那を探している君龍、洋行かぶれの蘭花等、個性豊かで艶やかな女性達の周りを、保険会社のエリートとして成功し、近代合理主義の権化のような吉岡、女形の売れっ子役者の瀬川一糸、女が苦境に陥る瞬間を楽しむ悪趣味がある海坊主等の男性陣が囲み、恋と打算の「腕くらべ」をしながらしたたかに懸命に生きる様を、雅かつ軽妙洒脱な文体で描かれています。
「腕くらべ」では、個性豊かな人物が多数登場したこともあり、読書会では各登場人物の個々の話題が比較的多く出ました。それぞれの人物に対し、男女様々な意見が飛び出します。
「駒代の店はどうなるか」
「吉岡は結局最初から駒代にも菊千代にも愛されていない。最後に捨てられそう」
「瀧次郎の今後はどうなるか。もっと見てみたかった」
「蘭花とか今の時代にもいそうなキャラ。キャラがそれぞれ魅力的」等々…
参加者の意見が出る度に、「そういう読み方もできるのか」「そんな面もあるかもしれない」と自分一人の読書では決してたどり着かない新しい発見があります。
また、「腕くらべ」の章立ての名前が素敵、難しい漢字や語句もあるが、読みやすく抵抗なく読めた、自然や服装等の描写が豊かで美しい等、現代の小説とは違った味わいのある文章を評価する声も多く聞かれました。
宴もたけなわで、ベストドレッサー賞の発表です。
今回のお題はもちろん「浴衣」。浴衣について、なぜその浴衣を選んだのか、浴衣のポイントについて、それぞれ語り、選ばれたのは同票でこのお二人…!
紺地に白の花模様が美しいまさに浴衣美人ですね。おめでとうございます。
次回の猫町倶楽部@福岡文学サロン月曜会は【澁澤龍彦】没後30年記念企画!!
課題本は「高丘親王航海記」(文春文庫)です。
2017年9月30日(土)16:30〜18:30 懇親会もあります(読書会だけの参加もOK)
今回は場所が変わり、福岡市営地下鉄赤坂駅徒歩3分にある「HAPPY HILL」にて。
*学生の方は学割もあります
皆さんのご参加お待ちしております。
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