扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2017年8月5日(土) 
  • 金沢月曜会第21回『おくのほそ道』

去る8月5日午後、第21回金沢文学サロン月曜会が開かれました。
場所は、金沢市中心部(竪町通りをちょこっと横に入る)の古民家カフェ「Full of Beans」さん。

2階席で浴衣着用の身にはうれしいテーブルと椅子。
そう、今回は記念すべき金沢文学サロン初の「浴衣読書会」でもありました。



この日は花火大会もあり、街なかは浴衣の男女で溢れていましたが、ここ月曜会会場にも浴衣美女たち(他称1名、自称1名、都合たぶん2名)がたおやかに参集。



今回の課題本は、はせを翁「おくのほそ道」です。

まずは、Full of Beansさんの素敵なデザートとドリンクをスターターに。





参加者は男性4名女性2名の6名。
中には名古屋からの「『プロの』スナフキン/ハルキスト」氏も。
途中、帽子ならぬ手拭いを頭に巻いての熱いトークをいただきました。
はせを翁もうらやむような世界を股にかけてのフィールドワーク、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。


片雲の風にさそはれし折には、また金沢へ音信れて日夜語りつづけむ。



さて、課題本「おくのほそ道」です。

ホモ・ウゴキマワッテマスの私たちは、はせを翁のように旅にあくがれるわけですが、このような旅の形態――「上下関係のある旅の道連れ」ってどうなんだろうか。
そんな話にもなりました。
例えば、フィクションですがドン・キホーテとサンチョ・パンサ。フランス貴族/文筆家シャトーブリアンによるパリからエルサレムへの旅行記などは主従が連れ添う旅です。
金沢で曾良さんのぽんぽん痛いよ宿で寝たきりになったよ現象は、実はそのような関係によるストレスかも?やじきたコンビみたいなのだったらお気楽?一人旅と複数での旅行ではどっちがいい?などと話が広がります。
断然一人旅派という金沢女子は、なんと東京まで下道でいくドライブ14時間の旅を敢行したとか。

ここで一句、
雲の峰一人の家を一人発ち 岡本 眸




夏は、特に一人旅が心地よい季節なのかも。
住宅ローンなんぞにあくせくするよりも旅!旅に浪費せよ!というご意見もありました。
どっちもだと尚よいのですけれど。おぉ、ここに我らがファシリテーター殿の眼がキラリと。

※猫町倶楽部の読書会ではファシリテーターと呼ばれる司会進行役がいて読書会が円滑に進む補助を行います。
…二者択一であれば、夢が枯野をかけ廻るような最期を遂げた俳人のごとく旅に生き旅に死ぬような人生もまたよし。
おくのほそ道の奥の深さは、結晶化された簡潔透明の芸術の中に哲学的命題をひそませているところにあるのかもしれません。




ちなみに、余談で恐縮ですが「早稲の香や分け入る右は有磯海」ほどでさらっと通過したような富山―石川ルートですが、途中高岡にも滞在していますby曾良さん。

「有磯海」とは高岡の雨晴海岸から氷見との境辺りまでですし、課題本「おくのほそ道」は歌枕を探訪する旅なので、高岡を万葉の里にしてくれた家持くん、ありがとう。

ここで一首、この句へのオマージュとして作られたものを。

倶利伽羅の峠に立てば右は海いちまいの地図となる風景は 俵 万智

属国より都へ倶利伽羅を越へ通ふものあり、とりあへず書き散らしたる。

…ではまた次回、虫啼く頃、金沢でお会いしましょう。


本を読んでそれについて語れるって、ほんとにいいですね。
たのしさはふえし蔵書にちろろ虫 水原秋櫻子




文 さく 写真 まるごと 編集 ふくしげ

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