扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

名古屋文学サロン月曜会[文学]

  • 2017年8月20日(日) 
  • 【名古屋月曜会・撞木館】谷崎潤一郎「夢の浮橋」 ゲスト:西野厚志

8月20日、谷崎潤一郎研究者の西野厚志さんをゲストにお迎えし、 満員御礼の40名(うち初参加4名)にて谷崎晩年の代表作『夢の浮橋』の読書会が催されました。
今回の会場は名古屋市内の「文化のみち 撞木館(しゅもくかん)」。



撞木館は大正末期から昭和初期にかけて建てられた、敷地内に洋館・純日本家屋・茶室などを擁した邸宅です。門を抜けて、まずはカスタード色の壁の洋館へ。ステンドグラスの精緻な細工を楽しみながら奥の廊下へ進むと、平屋建ての和館に続いています。



本日はこちらの和室を二間お借りしての読書会です。



しっとりとした純日本家屋に多くの浴衣姿、そして夏の夕暮れがだんだんと宵闇に変化していく中、まさに『陰翳礼讃』の世界を感じながら読書会が始まります。
さて、どんなことが語り合われたのか、様子を少し覗いてみましょう。



「谷崎の作品は、決定的なことは描かずに全体的にベールに包まれている印象を受ける。」
「読み方によって生母への思慕や義母への憧憬の話とも取れるし、義母と性的関係を持つ話とも取れる。」



「この作品に出てくる糺はあまりにも素直すぎる長男だし、義母にもうまく転がされていると思う。」
「糺は、自分の欲望からの行動を、父のコントロールに責任転嫁しているように感じる」



「弟の誕生前後で物語がガラッと変わったように感じた。前半は母子の蜜月の話、後半は家族の物語になっている。」
 
西野さんもテーブルを廻り、疑問に答えたり、話題になったことにさらに知見を加えたりしていただきました。



「糺と継母は肉体関係を持ったのか」、「継母の死は澤子によるものなのか」、など物語で仄めかされるもはっきりとは書かれていない部分にやはり質問が集まったようですが、そこは後半のレクチャーで“解決編”を、という西野さん。



また、「文学の中の究極の食物」ということで『夢の浮橋』の「母乳」にくわえ、9月名古屋会場の課題本『野火』の「食人」に触れたお話もしてくださいました。
 
読書会に続いて西野さんによるレクチャー、お待ちかねの“解決編”です。



『「ほの白い夢の世界」をさまよう』と題し、様々な点からこの小説の背後に見えるものを解説される西野さん。物語の舞台となった「後の潺湲亭」について、源氏物語との人物関係の相似から見えてくるもの、其処此処に散りばめられた“double”、そして小説の主題である「母恋」とそのゆくえについて等々、たっぷりとお話しくださいました。



物語を読み終えて取り留めなく抱いていた感想・疑問が、お話を聴きながらだんだんと整理されていったように思います。
 
その後は場所をかえて懇親会へ。西野さんも参加してくださり、まだまだ聴きたりない!というたくさんの参加者に囲まれて、お話も盛り上がりました。



終了後、「今回の会場は課題本にぴったりで本当に良かったね」という声があちらこちらから聞こえてきました。谷崎の美意識が具現化されたような空間で、「夢の世界をさまよう」贅沢な読書会をみなさん存分に楽しまれたようです。
西野さん、参加者の皆さん、ありがとうございました!
また次回も皆さんのご参加をお待ちしています。



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まだ見たことがない、という方はぜひ一度覗いてみてください。
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文責:Yu
写真:Yu
(名古屋文学サロン月曜会第10期サポーター)

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