扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2017年10月07日(土) 
  • 金沢月曜会第23回『方舟さくら丸』安部公房

平成29年10月7日(土)
会場:Full of Beans

 

今回の課題本は『方舟さくら丸』(著者:安部公房)
参加人数は男性4名女性1名の計5名の乗組員たち。



 

 

自己紹介から始まり、気持ちがほぐれた頃にいつの間にか作品について話題が移っていきます。
この自然な導入はファシリテーターの方の『匠の技』に違いない!

と、いうわけで、まずは全体の印象について。

 

〈全体の印象〉
名前は知っているけれどきちんと作品を読んだことはない作家
はじめはとっつきにくいが、読み進めていくにつれ引きこまれていく文章
最後までどこか馴染めなかった

 

 

 

なんとなくの印象ですら皆違うという事に気付かされるのが、この会の面白さだと感じます。

そして話題は徐々に作品の細部へと展開していきます。

 



 

〈内容について〉
核戦争が起きると信じている主人公という設定
→この作品が書かれた時代背景に起因するもの?

 

人間の汚い部分がよく描かれている
→作品の根底に終始流れているもの
作中、主人公の精神的な成長がみられる→人間の汚さが描かれている中で、救いとなっている

 



登場人物の女性の役割

今ではセクハラだと非難されるような言動がよく出てきて、物語の柱の1つにもなっている

→女性蔑視に対する作者の批判が込められている?それとも作者の単純な願望?

タイトルの意味
さくら→日本の象徴?
最終的にはサクラが船長になることの暗示?
タイトルは後付?

 

登場人物がはじめから終わりまで誰も互いに信用しきることはない関係



なぜ方舟?
本当に核戦争が起きたとして、メチャクチャになった地球で生き残ってどうするつもりか
なぜ生き残りたいのか?
→生物としての本質的な生存欲求

 

未解決エピソードがいくつもある
→伏線が未回収になっているともとれるが、それらのエピソードがあることで物語が動いているとも見られるので、一定の役割は果たしていると考えることも出来るかも

 

ユープケッチャ
→1箇所から動かない
→主人公自身のこと
→すべての人間に当てはまる

 

作中の食事シーン

小説って普通は読むと食欲をそそられる描写が多そうだけど

本作品は読んだ時に全く食欲が湧かない、美味しそうだと思えない

湿気、カビ・埃の臭い

全体的に陰鬱としている

 

ワープロで書かれた作品
時々出てくる記号や不自然な文字の間隔にはなにか大きな意味があるのか
→ひょっとするとワープロの機能を使ってみたかった筆者のおアソビ?



高尚なラノベ
(ラノベの定義についても盛り上がりました)

 

ざっと出てきたことの一部を並べてみましたが、まだまだ沢山の話題があがりましたよ〜
最早これは連想ゲームなのでは!?と、参加する度に感じます。それも楽しさの一つかな。脳ミソゆるゆる。

ある参加者の「作中の、人が人を選別する思想は今回の総選挙でアノ党がやっていることと通づるのではないか」という言葉にハッとさせられました。

「読み終わった後にモヤモヤが残った」と言う方もいれば、自分のように「ラストはなんとなく清々しさを感じる」という人間がいたり、本当に感じ方は人それぞれだなぁと思いました。

一冊の本に、人生の数だけ感想が生まれ、そしてまた人生の一部になっていくのですね。

 

読書って、本当にいいものですね。

 



 

今回のドレスコードは舟(あるいは作品にちなんだもの)。
さて、皆さんは何を準備されたのでしょうか……

・ハンチング帽(猪突のハンチングから)
・海王丸のメダル
・安部公房対談集
・海図ブックカバー
・手首に湿布(シップ→ship→舟!!)

湿布にはやられました。その発想はなかった……スゴい!



 

文 つか 写真 まるごと 編集 ふくしげ

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