猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017年9月30日(土)
- 第6回フィロソフィア東京 國分功一郎 「中動態の世界」
9月30日(土)、季節の境目、気温の変化を肌に感じつつも穏やかに晴れた日、第6回フィロソフィア東京は開催されました。今回の課題本は医学書院刊「中動態の世界―意志と責任の考古学―」著者はこれまでも猫町で何かとご縁のある國分功一郎さんです。
名古屋の猫町倶楽部で始まった哲学・思想系の読書会を行う分科会を、「フィロソフィア」と名づけてくれたのも國分さんです。今回もまた、講演を含めたゲストとしてお招きしました。
「中動態の世界」は、かつてあったはずの中動態という概念を、言語学や文法書から、歴史から神学書、はては不良のカツアゲからメルヴィルの物語まで、膨大な文献を手がかりに言葉、思想、哲学を熟考し、試み、あらゆる方法と見方で、國分さん自身がその世界の輪郭をつかみとるために問いかけ、追い求めていく行為を、読者も「一緒に」なって確かめていくような、大変読み応えのある、まさにフィロソフィア的な内容となっていました。
会場であるスマートニュースには、この日100人を超える参加者が集まりました。一つの班を6人から8人とふりわけて、15グループほど、テーブルは端から端までいっぱいです。
大きな会場が徐々に徐々に人で埋まっていき、これからここにいる人たち全員で同じ本の話をするかと思うと見ているだけで興奮していきます。
猫町倶楽部の読書会ではそれぞれの班の中から、ファシリテーターという司会進行役を選びます。それはフィロソフィアでも同じです。今回は参加者の中から事前にお願いをして、ファシリテーターの方たちに読書会前の意見交換をしてもらいました。そのときからすでに、奥行きのある今回の課題本に対しての活発な議論があったそうです。(戦いはもう、始まっていた!)
猫町倶楽部主催の多津也さんと、ゲストの國分さんからのお言葉を皮切りに、さあ、読書会の始まりです。普段はなかなか会話できない、同じ本を読みあったもの同士だから生まれる疑問や不思議が、あちらこちらで投げ出され、行き交い、それぞれのグループの小さなコール&レスポンスが、会場全体をたいへんな盛り上がりに変身させていきます。
参加者の中には初めて猫町倶楽部に来たという人も、たくさんいらっしゃいました。
その日初めて顔を合わせたメンバーは経歴も年齢も様々。國分さんの大ファンという人もいれば、アレントの哲学を大学で研究中の人、大学で言語学を勉強していた人、精神科医のお医者さんなど「中動態の世界」で語られる部分のどこかしらに、かかわりを持つ人も多かったようです。もちろん反対に、生活の場に哲学の「て」の字もない、だからこそ、この本を手掛かりにそういうことを考えたいといらっしゃった方もいました。
「全てに意思があると考えるほうがおかしいのでは?」「意思がないとすると罪は誰がどう償うの?」「放下ってみなさん意味わかりましたか?」「思考と言葉の結びつきは?」「喋った言葉が自分に返ってくる」「個人で考える中動態、社会で考える中動態は違うよね」「どこまでが自分なんだろう」「私を疑うようになるな」課題本の中でわからなかった部分やそれぞれが受け取って考えたこと、この本はいったい何をいっているのか。いつまでもが終わりません。
読書会は当たり前ですが、全員がその場その場で意見を交換します。
開けてみるまで分からない大きな大きなプレゼントの箱を、たまたま一緒になったメンバーたちで手分けして分解していくようなことかもしれません。この一辺とこの一面にはこんなことが書かれていたから、僕はこんなふうに開いてみる、私は、貴方は。包装紙やリボンを丁寧に紐解いて、全部の面を開けたときにわかる箱の中身は、班によって違います。
分け前も違うかもしれないし、見ているうちにみんなが開けてくれるかも。
でもちゃんとみんな、箱の中にあった中身を、持って帰っているような気がします。
今回の読書会では、著者の國分功一郎さんが、各班をまわって、例えば会話の流れで生まれた疑問であるとか、純粋に著者に聞いてみたかったことなどの質問タイムも設けられていました。参加された皆様の積極的な質問に、國分さんも自然と笑みがこぼれ、素敵な交流の場になりました。とある質問の「人を好きになるっていうことも中動態なんだよ」という國分さんの答えは、とても印象的でした。というか、かっこよかったです(惚れた!)。
さて、大盛況大興奮の中であっという間に読書会は終了、休憩をはさんで、國分さんの講演が始まりました。
講演の内容は、國分さんがこれから書こうとしている構想を中心として、とある哲学者にスポットを当てて広がった考察、どうしてその構想に行きついたか、國分さん自身がそのことのどの部分に面白みを感じているのか、どのようにしてその発想を突き詰めていくか、かなり細かく、具体的に「猫町倶楽部だからこそ話せることを」語っていただきました。
折々に触れる、哲学書、たとえばなし、聖書について、政治について、博識だけでは終わらないわたしたちに語りかけられるその熱量に、好奇心が刺激され、学生時代に戻って勉強しているような新鮮な気持ちが蘇ります。ここで聞いたことがいつか本になって目の前に現れることを思うと、とても楽しみでわくわくしました。
講演の最後での質疑応答もまた、ご参加された方々が次々と手を挙げて、時間いっぱいまで答えていただきました。「はい」や「いいえ」の一問一答とは違い、補完するようなやりとりは、たった今なされた講演をふりかえり、深いところまで共有できたような気がします。
最後に記念撮影を終えて、フィソロフィアは終了です。
今回はこのあと、読書会に参加された方たちにとってはスペシャルバージョンの懇親会となりました、猫町ナイトへとくりだしました!
会場にはもはや猫町ナイト恒例となりつつある、吉川浩満さん、紫原明子さん、二村ヒトシさん、そして國分功一郎さんのスペシャルDJタイムで大団円。
最後の最後まで盛り上がりと話題につきない、とっても贅沢な猫町倶楽部の夜になりました。
次回のフィロソフィアは11/19(日)課題本はフロイトの「夢判断」です!
夢について読んで語っていい夢を見よう!(そんな本じゃない?)
ご参加お待ちしてます―!
写真・せいこさん 文・なら