猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017年11月4日(土) 受付開始 16:30 読書会17:00~19:00 懇親会19:00~20:40
- 第33回 関西文学サロン月曜会 フィリップ・K・ディック 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は私が関西文学サロン月曜会に参加するようになり初めての発表時既読の課題本でした。嬉しかったので開催レポートを引き受けさせてもらいました。
読書会参加者や読書会に興味がある皆さんに、参加者兼サポーターとして読書会の楽しみや11月の関西文学サロン月曜会の雰囲気をお伝えできればと思います。
今回の課題本は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」。
その奇妙で奇抜なタイトルとカバーイラストに引きつけられこの本を手に取られ読まれた方も多かったようです。作者はフィリップ・K・ディック。50年後のアメリカを舞台に書いたSFで1968年の作品です。
描かれる未来は荒廃しており、気分を安定させる情動オルガンや電動のペットに囲まれ、カルトなコメディ番組を見ながら人とアンドロイドが生きている風変りなノワールの世界。
読んだ後に誰かと話そうと思ったけれどそのまま時が過ぎていた本の1冊でしたので、課題本に選ばれ嬉しかったです。
猫町倶楽部ではだいたい一か月前に課題本が発表されます。発表されてから読書会の日までの間は、読書会当日の様子や、どんな話が出て、どんな人が来るだろうかと考え、楽しい時間です。
読書会の参加条件は課題本の読了ですが、今回はもう少し作者のことを知りたくなり、「フィリップ・K・ディックの世界」という作者のインタビュー本を見つけ読みました。本の世界とクレイジーなディックの生き方が重なり、少しだけ作品に親しみを感じました。
読書会の約1週間前の10月27日には映画「ブレードランナー2049」が公開。コラボということで11月のシネマテーブルの課題作品でもあり、当日話せる人がいそうだと思い、本を原案に作られたリドリー・スコット監督の「ブレードランナー」と合わせ見ました。
開催が待ち遠しくなる瞬間です。
11月3日、読書会当日。今回の会場である恵文社書店一乗寺店イベントスペース「コテージ」は一枚の扉を隔てて店舗入り口のギャラリーや書籍売り場の奥の離れにあります。扉の前に立つと、初めてここを訪れたときの、ちょっとした躊躇いと期待を今でも思い出します。そして今日も変わらず扉の向こうに読書会の世界があると思うとなんだか不思議な気がします。
当日は43人の申込みがあり、会場は盛況でした。
私が参加したのは、初参加の方二人と猫町倶楽部読書会代表のタツヤさんとの7人のテーブル。本のタイトルにちなんで準備されたフランス菓子の「オハヨービスケット」製の羊型のスペキュロスクッキーを食べながら自己紹介しました。今日の参加者は30代ぐらいを中心に大学生からシニアまで、大阪や京都にとどまらず、兵庫県や和歌山県から来られた方も。新しい方と話をするたびに、今まで自分が考えてもみなかった世界があることに気づきます。
読書会では、アンドロイドの話題を中心に盛り上がりました。
作中フォークトカンプフ検査で識別される「アンドロイド」、あるいは現代の「AI(人工知能)」のプログラムされた行動と人の行動はどう違うのか。その差はなくなるのか。アンドロイドに浮気する主人公と妻の関係の行方について。最近ニュースにもよく取り上げられている「AI」の発達は、どう世界が変えるのか。人は面倒くさいし傷つくこともある愛を、それでも人に求めようとするのか。主人公とアンドロイドのヒロインとの束の間の関係は、遊びなのか真剣な浮気なのか。そしてアンドロイド同士の間で愛や友情が成り立つのか。
タイトルにある電気羊のような機械が象徴する作中の小物も話題となりました。主人公たちはなぜ電気仕掛けの動物を欲しがるのか、人がステータスのため高級車を買うようなものか。情緒オルガン(ムードオルガン)に入り込む妻の姿は、二人でいるのにスマホばかりみている人とそっくり。マーサー教の山にマーサーが昇るのを見る装置は、VRみたいなものか。マーサーが石を投げられると、視聴者が同じ痛みを感じられるような装置ができるとしたらどういう仕組か。マーサー教の意味は何なのか。
本にまつわる話は尽きず、あっという間に時間になりました。
関西文学サロン月曜会では、あらかじめ課題本にちなんで発表されたドレスコードに身を包み参加し、テーブルごとにベストドレッサーを決めています。今回のテーマはずばり「ロボット」。ロボットにちなんだアクセサリー小物やイメージする服装が披露されました。ベストドレッサーには、あの国民的猫型ロボットをモチーフに鈴を組み合わせた方や、未来風の衣装に身をつつんだ人などが選ばれ、テーブルは盛り上がりました。
少しの休憩を挟み懇親会となります。今日の料理は京都出町柳の「ラトリエ・ドゥ・ミイ(フレンチデリ・カフェ)」さん。羊肉を使ったハンバーグなどカラフルでたくさんの料理が並びました。お酒やお茶を片手に、あちこちで話に花が咲きました。
懇親会の席替えでは「映画」や「フリートーク」「作品について語り足りない」「酒」など6つのテーブルが準備されました。
この懇親会テーブルでは、読書以外の趣味の知り合いが増えたり、ふだん自分が手に取らない作品や、行かないイベントや映画について、話ができます。何度か参加すると、前に知り合った人たちと会えるこの時間が楽しみになってきます。
今回も気が付けばあっという間に3時間が過ぎていました。終わった後に気になっていたタイトルについて、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」という疑問を聞き忘れていたことに気づきました。
11月読書会も大勢の参加ありがとうございました!
12月3日のクリスマスパーティーを挟み、次回1月13日土曜はアガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」です。12月8日金曜にケネスブラナーが監督し主演する映画「オリエント急行殺人事件」の公開も控えており、今度も盛況になりそうです。
会場は10月の会場にもなった大阪のラポーティアになります。
また皆さんと読書会できるのを楽しみにしています!
文:ささき 写真:未来、まみ