猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2018年2月16日(土)
- 金沢月曜会第26回『三四郎』夏目漱石
第26回の金沢文学サロン月曜会を開催しました。
場所はおなじみの古民家カフェ『full of beans』です。
今回の課題本は、
『三四郎』(新潮文庫)(著:夏目漱石)です。
九州・熊本の高等学校を卒業して、大学に行くために
上京する青年・三四郎の視点から見た世界と
彼の内面が描かれている作品です。
この作品は明治41年に新聞に連載されたもので、
後に続く『それから』『門』の三部作の序とされ、
小説らしい小説への移行が見られた作品とも評されています。
ドリンクとデザートをいただきながら、
本の印象についておしゃべりをするのが、
金沢文学サロン月曜会のスタイルです。
ちなみに、今回のデザートはこちら。
(このあと、おいしくいただきました。)
[デザートの写真]←ごめん、写真撮る前に食べちゃった・・・
冒頭はファシリテータのふくしげさんから
月曜会の説明があったあと、全員で自己紹介。
今回の参加者は9名で、
東京から来られていた方もいらっしゃいました。
読書会が始まると、ファシリテータから本のあらすじや
時代背景をさらっとおさらいしてもらえるし、
話題になりそうなポイントを考えていてくれるので、
初めての方も安心して参加していただけます。
また同じ課題本を読み終えてくるという
参加条件がありますが、それが共通の経験になるので、
お互いにすぐ打ち解けられます。
読書会の進行も「相手の意見を否定しない」という
シンプルなルールがあるだけで、
自由に安心して感想を言い合えるようになっています。
さて、読書会の内容ですが、
今回もいろいろな話題について話しました。
全く同じ物語を読んでいるのに人によって読み方や感想、
突っ込みどころが全然違ってるところが面白いですね。
まずは夏目漱石の人物評。
『こころ』のような重たい展開にはならなかったけど、
一人でもんもんと考える青年を描く印象が強くて、
作者本人もきっと周りとのコミュニケーションが
苦手だったのでは、
と考察された方もいらっしゃいました。
それから作品全体に漂う明治っぽさについて。
九州から東京に向かう汽車で差し出されたおやつが
桃だったり、
途中の停車駅で車内を照らすランプ(洋燈)を
天井から差し込む様子だったり。
当時は九州から東京は一日で到着しなくて、
名古屋で一泊するような行程だったんですね。
当時の文学や思想、文化などが出てくるので、
あと5回くらい読まないと味わい切れない、
という感想をお持ちの方もいらっしゃいました。
その方は今回の作品を「三四郎」視点で読むと、
田舎から出てきた青年がアーバンな女性に
一目惚れして翻弄されるストーリとも読めるけど、
「美禰子」の視点で読んでみると、
時代背景も相まって思い通りに生きることができない
女性の悲劇の作品としても読めるという感想に、
参加者の皆さんも大きくうなずかれていました。
「美禰子」はときどき英語をつぶやきますが、
そのシーンではきまって物憂げな言葉ばかりです。
迷子(stray sheep)、かわいそう(pity)とか。
それを周りの男たちがスルーする様子が
セットで描かれています。
また、空中飛行器に関する美禰子と野々宮の会話や、
冬物を買いに来た美禰子に香水の品定めを任されて、
わけもわからず適当に選ぶ三四郎の様子など、
まるで男女の意思疎通がすれ違うことの象徴みたい、
という感想もありました。
(ここで私も含めて男性の参加者が、 なぜか弁明する場面も。。。)
画工の原口が美禰子をモデルに絵を描きながらの
三四郎との会話の中で、
「画工は心を描くのではない。
心が外へ見世を出しているところを描く」
と言った表現が印象的である意味漱石っぽい、
という感想もありました。
そうこうしているうちに、
予定していた2時間の読書会はあっという間に終了。
私自身も読了した直後は、
内容の理解が追いついていませんでしたが、
みなさんと感想を言い合うことで、
ずいぶんこの作品を楽しめたように思えます。
最後に課題本を持って記念写真をパチリ。
次回の読書会の課題本は、 3月17日の土曜日
『老人と海』(新潮文庫)(著:ヘミングウェイ)です。
次回も多数のご参加お待ちしております。
文 まきしむ 写真 つか 編 ふくしげ