扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2018年3月17日(土) 
  • 金沢月曜会第27回『老人と海』ヘミングウェイ

猫町倶楽部金沢開催レポート ヘミングウェイ『老人と海』

2018年3月17日(土) 場所:Full of beans

第27回金沢文学サロン月曜会の開催レポートです。
場所は、金沢市中心部(竪町通りをちょこっと横に入る)の古民家カフェ「Full of Beans」さん。
2階席のセミクローズドなテーブルで、読んだ本の感想を言い合っています。
オシャレな場所と、知的(風)な会話、それだけで読書会はあっという間に過ぎていくのです。





今回は、たけさんによる開催レポートです。





私は海の傍で生まれ育ったもので、海を眺めることが生活の一部でした。
今回の『老人と海』の主人公は海で生きる漁師。
単に海を眺めることと、海で生きることのとてつもなく大きな差を感じながら読みました。

以下は、当日話された内容の一部を二人の会話に再構成したものです。参考になれば。

A「さて、今回は『老人と海』だった訳だけど。どうだった?」

B「なんというか、ハードボイルドだね。男と動物しか出てこないし。多分若い頃読んでたら面白さが分からなかったな。今だからサンチャゴの気持ちが分かる」

A「その主人公のサンチャゴだけど、漁師ってさ、待つのが仕事なんだよね。魚との我慢比べ。本当に一つのことに何日もかけて取り組むってのがまさに描かれた作品。でも途中で回想が入るじゃない、ライオンの夢とか黒人との腕相撲とかさ。みんな自分がピークの頃の思い出だから、サンチャゴの現実逃避でもあるんだけど」

B「サンチャゴは野球大好きだけど、選手の活躍に自分を投影してるのかな? ディマジオみたいな身体の苦痛を俺は今体験してるのかって、選手と自分を重ね合わせるような描写もあった」

A「特に漁師にかかわりのある選手に、かな? もしかしたら手漕ぎ舟へのこだわりもそれと関係するかも」





B「ところで実は私原著でも読んできたんだけど。新潮文庫と光文社文庫だと同じシンプルな英文でも随分印象が変わってくるね。例えば漁から戻ったサンチャゴがベッドで寝たいって思うシーン」

A「確かに。外国文学を翻訳で読む楽しみの一つだね」

B「序盤のサンチャゴとマノーリン少年のイエローライスと投網の掛け合いはグッときた。無駄なシーンかもしれないけど、こういうシーンが描けるのがプロなんじゃないかな」

A「ラストシーンも印象的だね。突然何の関係もない観光客を出してくるのが上手い」

B「結局ヘミングウェイはこの作品で何を伝えたかったのかな?」

A「一言じゃ言えないけど…老いとの闘いはテーマの一つじゃないかな? サンチャゴは知識も経験もある。右と左の腕で別々の作業ができる。でも体力
は落ちてる。「あの子がいたらな」って弱気にもなる。カジキとの闘いは自分との闘いでもあった。三日もぶっ通しで漁するなんてホント修行僧が苦行してるみたいだよ」






B「そして結局獲物を得られず帰ってくる。ハッピーエンドじゃないのがむしろ深みがあっていいじゃない? もしサンチャゴが獲ったカジキを売りさばいてエンジン付きの立派な舟に乗り換えたりしたらがっかりだよ(笑)」

A「後さ、サンチャゴが自分のいなかった間の新聞を読みたがるの、良く分かるんだよな。一日一日の蓄積を感じたい」






最後に今回のドレスコード(お題:サカナ)をお互いに見せ合いました。
●ロックバンド「漁港」のCDジャケット
●釣り人のダウンジャケット
●いわしっ子
●上着の青色と真珠の首飾り
 かく言う私は、錨のマークの入った下着を付けてました。下着なので見せられませんが。


 次回は4月7日(土)、課題本は三島由紀夫『仮面の告白』。参加待ってます!



みんなでパチリ。





文:たけ 写真:まるごと 構成、編集:ふくしげ

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