扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

特別イベント

  • 2018年4月7日(土) 
  • 金沢月曜会第28回『仮面の告白』三島由紀夫

課題本:『仮面の告白』
期日:2018年4月7日(土)  場所:Full of beans




 私にとっては刺さる小説でした。
例えるなら三島が土足で私の内面にズカズカ上がり込んできて、私が最も大切に隠し持っているものを、臓腑を引きずり出すように取り出す―しかし取り出したのが三島なのか、取り出されたのは私なのか、その逆なのか。

そもそも彼と私の境はあったのか、なかったのか。そんな印象を持ちました。一種の陶酔状態です。


以下、話し合う中で出たいくつかの論点を拾ってみます。

<『仮面の告白』というタイトル、そして物語り方について>
・三島にとっての仮面とはなんだったのか? 
→私はよく言われるパーソンの語源はペルソナだという話を想起した

・タイトルや叙述がアウグスティヌスの『告白』を思わせる
  →では三島は誰に対して懺悔しているのだろう?むしろ芸術として昇華?

・法学部出ただけあって、論理的な構成。erectioというラテン語表記や「悪習」という言い方に彼の美意識を感じる





<冒頭のシーンから主人公の少年時代までについて>
・「俺は自分の誕生を覚えてるんだぜ…」という自分の神格化の宣言なのではないか?
  →でも意外と覚えている人もいるらしいとの意見も

・宗教的なものにエロティシズムを感じる機会ってある?あるとしたら一番早いのはいつ、どんな場所で?
  →例えば学校や公園にある彫刻や銅像は何故裸?という疑問を子供は持つのでは?エロスを感じるかは別として

・「ゲスごっこ」みたいな遊びは自分の学生時代にもあった
  →スカートめくりなども似た意味があったのかもしれない。度胸試し的な


<園子の人物像について>
・印象が薄い。物語の運びに必要だからつくられた人工的な存在にも見える
  →三島は女性をよく観察しているが、ただ克明正確にやっているだけで感情が伴っていないのでは?女性の太ももが露わになる描写もそう。実験記録みたい

・シーンによってブレを感じる。電車の相席の場面では計算高さが、他の場面ではうぶで純粋な感じがする。結婚後には主人公に対して性的な優越が出てきたみたい。貫禄?

・「お慕いしております…」という園子の手紙のフレーズにシビレた。この時代の女性からのアプローチの仕方が現代と異なり新鮮。奥ゆかしい
  →でも作中園子自身が愛の告白をしているシーンもある。「どんなにいいかしら…」






<主人公の肉体へのこだわりについて>
・主人公の自分の病弱さへのコンプレックスが、近江の肉体への強烈な憧れにつながったのだろう
  →女性の場合はどうなのだろう?化粧?整形も美への努力として認められるのでは?という話から、韓国では儒教があるのに美容整形が盛ん、でもキリスト教も普及してるし、太極旗に卦が書いてあって…とどんどん話が脱線

・女性は男性の肉体のどんなところに惹かれるのだろう?
  →二の腕とか、声とかいう意見が


<性体験について>
・男にとって不能であることの衝撃が描写されている。女性からみるとどうだろう?

・主人公は男として男に惹かれている。天勝の扮装の部分もその視点から読める

・男にとって性体験の初年齢。早い方が良い? 
  →柳原白蓮の恋愛相手のエピソードから、「潜水式」なる言葉があったとの豆知識が



最後に、今回のドレスコードを互いに確認しました。お題は「春」です
・漆塗りで桜柄のネクタイピン(でも持ってき忘れた!)
・パステルカラーのシャツ
・某大学の近くで受験生に間違われて貰った合格カイロ





次回もお待ちしてます!


文:たけ 編集・写真:ふくしげ

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