扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

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東京文学サロン月曜会[文学]

  • 2018年5月20日(日) 読書会16:30-19:00・懇親会19:00-21:00
  • 第8回 東京文学サロン月曜会第二会場「駒井組」 ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」

風薫る新緑の5月20日。
いつものモンスーンカフェ銀座にて、東京文学サロン月曜会第二会場通称「駒井組」の読書会が開催されました。
今回の課題本は、ウィリアム・ゴールディング著「蠅の王」
スティーヴン・キングを始めとする作家や作品に多大な影響を与え、3度目の映画化も進められているという世界的な名著です。

受付時間の16時を過ぎ、参加者の皆様が続々と集まってきます。

受付ではサポーターと呼ばれるボランティアスタッフがお出迎え



くつろいだ雰囲気の中、開始時間を待ちます



テーブルには名古屋から流れ着いた巻き貝もご用意♪



16時半になり全員が揃ったところで、まずは選書を担当された光文社古典新訳文庫の創刊編集長である駒井さんからご挨拶をいただきました。
新潮文庫と集英社文庫でも出版されている同作品。
旧訳のファンも多い中、今回はあえてハヤカワepi文庫の新訳を指定です。



『ゴールディングという作家は、名前はよく知られていましたが、残念ながら今まで日本では広く読まれることのなかった作家です。
欧米の高校生や大学生、小説好きな人たちにとっては本当に重要な作品であるにもかかわらず、日本では今ひとつ理解が届かないもどかしさがありました。
その一因として日本と欧米の文化の違いが背景にあり、ゴールディング自身の戦争体験の意味を理解することが日本の読者にはなかなか難しかったのかもしれません。
なぜ欧米ではこれ程大きな衝撃を与えたのか?
今もう一度考えるべき時代ではないかと感じていますし、昨年新訳が出た意味もそこにあるのではないかと思っています。
従来の訳も優れたものですが、研究が進んで作品の解像度が上がるのが新訳の良さです。
読み比べてみると新訳という意味がとてもよく分かると思います。』

課題本を決める際、読書会に向いている作品かどうか考えながら候補作を読み直すという駒井さん。
今回の「蠅の王」も旧訳と新訳の比較のほか、その寓話性の高さから多様な読み方が生まれるのではないでしょうか。
課題本紹介の後は、ほら貝の音も高らかに(!?)いよいよ読書会スタートです!

ほら貝でメンバーを招集…?



参加者は8名のグループに分かれて感想を話し合います。
ファンだけが集まるわけではない点も読書会の面白いところ。
今回も思い入れの強い方から全く楽しめなかったという方までが揃い、猫町倶楽部の唯一のルールである【他人の意見を否定しないこと】を念頭に、思うところを自由に語っていきます。



駒井さんもテーブルを巡りながら参加

真面目に
楽しく
なごやかに!



「思春期の頃に旧訳を読んで、描かれている子ども像に共感した。」
「スタンフォード監獄実験を思い出した。」
「カニバリズムに至るような凄惨な話を想像していたが、食べ物が結構あり少し拍子抜けした。」
「興味深い作品だけど、好きになれない。」   等

まずは率直な印象に始まり…


「七つの大罪の中でなぜ「蠅の王」なのか?」
「最後に大人を登場させたのはなぜなのか?」
「ナチス隆盛の一因に「コスチュームがかっこいいから」というものがあるが、ジャックの化粧もこれに当たるのでは?」
「ラルフとジャックの対比に子どものリアリティを感じる。」  等

聖書における寓意や他作品にも見られる視点操作の手法、時代背景、「珊瑚島」との対比による無垢な子ども像へのアンチテーゼといった作品の意図を探りながら話したり…


「戦時中の設定だが、最後の場面が唐突で大規模な実験のようにも読める。これが実験なら最後の人物は実は作者なのでは?」
「姿を映すもの=社会性の象徴であって、ジャックが羞恥心と自意識から解放されたタイミングで水底に自分の姿を見るところに、成長過程の葛藤と大人になることへの抵抗が表れているようだった。」
「新訳は旧訳より簡潔な文章になっている分、類似したシチュエーションが時間の経過とともにどう変化しているのか捉えやすくなっている。」   等

「蠅の王」を出版した当時のゴールディングは、作品の意味には作者本人の意図が絶対的な権威を持つと考えていたそうですが、読書会では意図を推し量った読み方だけが正しいわけではありません。
作中で語られていない背景に想像を膨らませてみたり、視点を絞って読んでみたり、翻訳ものならではの違いを話したりと、話題は次から次へと移っていきます。

他にも
「もし女性だけだったら?」
「もし自分が少年の一員だったら?」
「もし救助がこなかったらいずれロジャーがジャックを殺していたのでは?」  等

仮定の話や、はたまたネアンデルタール人とホモサピエンスの違いにまで及び、一人で読んでいるだけでは思いもよらない話に展開していきました。


そして読書会の最後には、各テーブルからベストドレッサーを選出します。
猫町倶楽部の中でも月曜会にだけ設けられたドレスコードには、その月の課題本にちなんだ遊び心が込められています。
今回のドレスコードは、作品の舞台である南太平洋の無人島にちなんで「南国またはスマートカジュアル」です!
ベストドレッサーに選ばれた方は、どなたも「南国」のイメージのようです。
リゾートカジュアルの軽やかな装いから涼やかな和服まで「南国」という言葉からこんなにも広がるんですね。


ベストドレッサーの皆さまには猫町特製のしおりと副賞の文庫本をプレゼント♪

しおりには美の格言が



ベストドレッサーの皆さま、おめでとうございます^^



さて、会も後半に入りここからは懇親会の時間です。
まずはテーブルごとにかんぱーーーい!!!


 
自由に移動してOKな時間ですが、まずはゆっくりとお食事を。
  
  
お食事が進むにつれ席を動く方も出てきて、とてもリラックスした様子です。
  

ホラガイズも楽しそう



盛り上がり続けた懇親会も、名残惜しいですが21時には一旦終了です……が…!
まだまだ話したりない方たちは、恒例の三次会へ。
今回は参加者50名のうち30名以上の方が三次会までお喋りを楽しみました。
それでも話したりない方はまた次回!

************
次回の開催は7月22日(日)、課題本はミヒャエル・エンデ著「モモ」です。

  

本国ドイツに次ぐ発行部数を誇るほど日本で大人気のミヒャエル・エンデ。
読んだことのない方も「時間どろぼう」という言葉は
どこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
次回もたくさんのご参加をお待ちしております☆

またね!



記:ひとみ     写真:真珠、マッチュ、ひとみ

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