猫町倶楽部

2018年5月18日、名古屋月曜会藤が丘会場の定例会が開催されました。
（参加者は27名、そのうち初参加の方は2名でした）

今回の課題本は、金井美恵子の初期短編集「愛の生活・森のメリュジーヌ」です。この本には、表題作の２作品を含む、全１０作品が収められています。金井美恵子は短編に定評がある作家で、「愛の生活」は彼女のデビュー作です。



読書会の前に、JAZZ茶房青猫のマスターによるJAZZ講座が行われました。今回マスターが取り上げたのは、ラリー・カールトン。彼はとても技巧派のミュージシャンだったそうです。最も売れたのは『夜の彷徨（さまよい）』というアルバムですが、廃盤で入手困難になっています。ベストアルバムは入手可能とのことです。



その後は読書会です。この日の司会はゆきさん。



簡単な自己紹介のあと各自が感想を話し、読書会がスタートします。



・読みやすい話と読みにくい話と両方ある
・比喩が美しい
・1970年という時代を感じるキーワードが興味深かった（レコード、都はるみ、電話交換手、ガスレンジ、手紙など）



・小説というより詩に近い作品が多い（細部が詩のように丁寧に書かれている）
・初期の作品が多いため実験的な技巧を試しているように見える
・モチーフは耽美小説と似ているが、直接的表現（女子高生の臭いなど）が多いためか、耽美小説とは異なる泥臭く地に足のついた印象を持った



・ロジカルに読もうとすると読めないので、言葉のイメージで映像的に読んだ
・臓器や拒食症の話などが出てきて身体感覚が面白い
・シニカルな表現の面白さがある
・父親との関係について書かれた箇所が印象的だった
・知識をひけらかしている感じがして違和感を感じた



「愛の生活」については、以下の感想が出ました。
・映画的。ゴダールのような、ヌーベルバーグの映画を思い起こさせる。
・日常の中にある落とし穴を描写している感じ。
・ラストの事故は何かの暗示なのか？



・「夢の時間」は気づいたら場面が変わっていて頭がついていかない。
・「アカシア騎士団」は江戸川乱歩の小説に似ていると感じた。
・「母子像」は父と娘の立場が逆転する物語で、これは起こりそうだと思うが、逆に母と息子の立場の逆転は想像しづらい。母と息子だと恋人関係への変化なら想像できる。

こちらは、短編「兎」にちなんだテーブル札とぬいぐるみです。作品のホラーな雰囲気が伝わってきますね。



課題本を読んだ人へのおすすめを紹介する「レコメンド」。関連本や音楽の紹介がありました。



様々な意見が出て盛り上がりました。

なお、個人的には読むのが大変な本でした。他の方の意見にもありましたが、論理を追って読もうとすると文章が頭に入ってこず、読了するのに時間がかかりました。論理よりは詩のような雰囲気を味わう小説なのかもしれません。また、読んでいて現実と非現実の境が分からなくなる作品もあり、独特の浮遊感を感じながら読みました。血や痛みなどの生々しい表現が多く、女性作家ならではの鋭い身体感覚を感じました。

読書会の最後には、各テーブルでベストドレッサーを選出しました。今回のドレスコードは「グロテスク」です。難しかったとの声も聞かれた中でベストドレッサーに選ばれたのは、こちらの皆さん。小説に出てくる要素をセンスよく取り入れていらっしゃいました。



作品に出てくるアイテムをフェルトで自作された方もいらっしゃいました。



青猫マスターの「本日の一曲」はEric Dolphy With Booker Littleの『Far Cry』でした。

読書会の後は、2次会会場へ。ここでも本の話で盛り上がりました。



今回が初参加の方にも会場の雰囲気を気に入っていいただけたようで、またぜひ参加したい、と言って下さいました。わざわざ金沢から来て下さった方もいらっしゃいました。本当にありがとうございました。

猫町倶楽部月曜会では月二回、名古屋会場と藤ヶ丘会場にて定例会を行っています。初参加も大歓迎です。お気軽にお越しください。
（この会の次の定例会は６月８日、課題本は海猫沢めろんさんの「全滅脳フューチャー」でした）


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文責：うえじ
写真：サポーター一同
名古屋月曜会10.5期サポーター