猫町倶楽部

「現代フランス文学の最前線を読んでほしい」

選書を担当している光文社古典新訳文庫の創刊編集長、
駒井稔さんのそんな想いを反映して、
課題本はレイラ・スリマニの
『ヌヌ〜完璧なベビーシッター』が選ばれました。
この作品は、世界的にも権威あるフランスの文学賞
「ゴンクール賞」の2016年受賞作品です。
※「ヌヌ」とはフランス語の「ヌーリス（乳母）」が語源で、
ベビーシッターを指します。





選書の理由について述べる駒井さん。
課題本とあわせて読みたい、おすすめのフランス文学やノンフィクションの紹介も。

会場は、落ち着いた雰囲気が素敵な銀座のモンスーンカフェで開催されました。
参加者は48名。



赤ん坊は死んだ。ほんの数秒で事足りた。

『ヌヌ』は実にショッキングな一文で始まります。

まず、すでに起こってしまったことが描かれ、
そこから「なぜ」それが起こってしまったのかが、
過去に遡って語られます。

完璧なベビーシッターである主人公ルイーズ
そして彼女の雇い主のミリアムとポール
その子どもミラとアダム
これら登場人物たちの心と動きを、
結末を知っている読者はハラハラしながら見守り、
そこかしこに理由を探し求めます。

しかし、本当に「なぜ？」の答えは見つかるのでしょうか？

それぞれの考える「なぜの答え」について話し合えるのが、
読書会の素晴らしいところ。
他の人の意見を聞くことで、
自分でも思いもよらない答えと出会えるかもしれません。



駒井さんも各テーブルをまわりながら、読書会に参加します



最大の謎である「なぜ？」あのような結末になってしまったのか？だけではなく、
たくさんの「なぜ？」をみんなで語り合いました。
「なぜ、ルイーズはミリアムとポールに執着したのか？」
「ミリアムとポールはルイーズのことを本当はどう思っていたのか？」
「ルイーズの生い立ちは？」
「『ルイーズ』と『ヌヌ』の表記の違いの意味は？」
「この後、登場人物たちはどのように自分の人生を生きたのか？」



巧みな構成で読者を物語にひきつけて離さず、
さらに多くの想像の余地を残している作品なので、
話は全くつきませんでした。
若い夫婦の子育て、女性差別、移民問題、貧困の格差など、
日本にも通ずる現代フランスの社会問題も話題にのぼりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

駒井組には毎回、課題本にちなんだドレスコードがあります。
今回のドレスコードはモロッコ出身の作者にちなんだ
「カサブランカ」もしくは「スマートカジュアル」です。

さらに、各テーブルで特に素敵なコーディネートをしていた方が
「ベストドレッサー」として選ばれます。



ベストドレッサーの方々
「カサブランカ」つまり「百合」を衣装にうまく取り入れています。
作中でのルイーズの衣装やメイクを意識した方、
モロッコの国旗の色を取り入れた方も。

ベストドレッサーには月曜会オリジナル栞と、
副賞として駒井さんが厳選した世界文学の
光文社古典新訳文庫がプレゼントされます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

読書会の後は懇親会！





美味しい食事とお酒をゆっくり楽しみながら・・・


カサブランカと参加者の皆さん








懇親会のあと、希望者は三次会へ。
毎回20〜30名が参加します。


楽しい夜はまだまだ続く・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次回、駒井組は11月11日（日）開催。
課題本はノーベル賞作家の莫言(ばくげん)『赤い高梁』。

抗日戦争時代の中国の農村を舞台にした、中国的マジックリアリズムの傑作です。
酒造りの一族の物語が祖父、祖母、父、母、主人公と、
時代と空間を自由自在に越えて語られます。
鮮烈かつ幻想的な情景描写が大変美しい作品です。

お楽しみに～。

記：かなこ　写真：なみ、真珠、いなみ