猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2019年3月9日(土) 受付開始16:30 読書会17:00~19:00 懇親会19:00~21:00
- 第49回関西文学サロン月曜会「モオツァルト・無常という事」
本町のラポーティアで、小林秀雄の『モオツァルト・無常という事』について語り合った。
僕は、星が輝き、霧の掛かった夜道を歩いていた。何故、あの夢を破る様なモオツァルトの管弦の音と皆の語り合う声が、いつまでも耳に残るのであろうか。
ドレスコード「音楽またはクラシック」を身に纏った人々が賑やかに笑い、人の語りに耳を傾ける。
あれは一体何だったのだろうか、何んと名付けたらよいのだろう、難解な小林秀雄の文章を必死に語ろうとする中で、時折語り出される綺羅星の様な解釈は。
彼の深遠な文化教養を絶えず聴かされ続け、最初のうちはただ自分の知識をひけらかしたいだけじゃないのかと思っていたはずなのに。美しく流れるだけで、頭には残らない文章だと思っていたはずなのに。
してみると、自分は認めているのだろうか、小林秀雄という人物を。小林秀雄の書く文章の美しさを、論理的構成を。人を動かす力を。突然浮かんだこの考えは、僕を驚かした。
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ここまでの文章は、小林秀雄『当麻』を元に、読書会当日の雰囲気を思い出しながらご参考までにちょっと真似て書いてみたものです。
(全然似てないけど、私には上記の文章が精いっぱいの様です)
彼が万感の想いで綴った「当麻」の想い出は、このレポートの筆者である私個人としては読書会の想い出に通ずるものがありました。
小林秀雄の様な流麗な文章ではとても書けませんが、
ここであらためて、今回の読書会の想い出を振り返ってみたいと思います。
今回の読書会の課題本は、小林秀雄『モオツアルト・無常という事』でした。
彼は近代日本の文藝評論の大家であり、本作は「モオツァルト」に始まり、「徒然草」「西行」「実朝」「鉄斎」「雪舟」「骨董」など多彩な分野での芸術批評が展開されており、あまりの古典的教養の引き出しの多さに皆四苦八苦しながら読了されたものと思います。
それでも今回の読書会には36名(うち初参加も4名)もの参加者が集まってくださいました。やはり小林秀雄を読んで語りたい層というのは一定層いるものですね。
ご参加下さった皆さん、本当にありがとう!
しかし沢山の方にご参加頂けたとはいえ、読んだものの頭に残らないとの前評判が多数だったので、今回はラポーティアの店長にお願いして「モオツァルト」に収録された曲のリストを流してもらいました。せめてBGMだけでも「モオツァルト」の雰囲気を感じてもらおうという試みです。
いつもと違う雰囲気に戸惑われた方もいるかもしれませんが、「クロイツェル・ソナタ」が聴けて嬉しかったと喜んでくれた方もいて、ホッとしているところです。
本作については、参加された方々からは文章の美しさや芸術に興味を抱かせる入門書としての優秀さ、入試問題などによく採用される論理構成などについての意見が上がりました。
もちろん、今回は難しいとの前評判の中で皆参加してくれているわけなので、皆が全ての短編を読み込めて来ているわけじゃないですし、自分が理解できたところを発言していく中で聴き手に何かインスピレーションを与えられているのだと思います。
例えば、鎌倉幕府第三代将軍である源実朝の和歌に感動された参加者の話を聞いて、「実朝だってこんないつ殺されるか分かったものじゃない鎌倉でお飾りの将軍職を務めるよりも、和歌を詠み、民の暮らしに祈りを捧げて暮らしていきたかったのだろうなあ」なんて想いを馳せてみる。
小林秀雄の「実朝」を肴に、こんな話で盛り上がれるのは幸せなことだなと感じます。
皆さんはいかがでしたか?何か心に留まるものがあったなら幸いです。
さて、今回の月曜会では皆さんにドレスコードとして「音楽またはクラシック」をテーマに参加をお願いしました。
皆さん思い思いのドレスコードを身に纏ってご参加頂き、今回も華やかな雰囲気の中読書会を過ごすことが出来ました。
当会では読書会の終わりには各テーブルからベストドレッサーを選出しております。今回のベストドレッサーの方々はこちらの方々です。おめでとうございます。
読書会の最後には参加者の皆で記念写真を撮っています。
難解な課題本を乗り切った後で撮る写真ですから、皆心なしかホッとしているよう。今回は本当に難しくて大変でしたよね。皆さんお疲れ様でした。
記念撮影の後は、乾杯をして懇親会の始まりです。
美味しい料理とお酒を飲みながら、小林秀雄から離れて自由に語り合いました。
僕のテーブルでは大阪で開催されているフェルメール展の話などで盛り上がりました。課題本の内容が芸術をテーマにしていましたし、関西では藝術部が発足したばかりということもあってか、美術館についての話題が多かったように思います。
懇親会の後半はいつも席替えを行い、テーマを決めて語り合います。
今回のテーマは「映画」「マンガ」「文藝ハッカソン」など。各々興味を持ったジャンルのテーブルに移動して語り合いました。
「文藝ハッカソン」って何だろう?と思われた方もいるでしょうが、猫町倶楽部では公式の読書会以外にも、美術館に行ったり、独自の読書会を開いたりと、猫町倶楽部の参加者が各自で様々な課外活動を行なっています。
「文藝ハッカソン」もその一つなのですが、詳しいご説明はいつかまたお会いした時にでも。
猫町倶楽部の読書会の先には、読書を愛する人たちが集うコミュニティが広がっています。びっくりするほどに広大に。
その入り口となる課題本はいつもちょっと難しくて(※筆者の主観です)、大変な本に手を出してしまったと思うこともあるかもしれません(※筆者の主観です)。
それでも小林秀雄で語りたい人がいて、小林秀雄を読んでみたい人がいる。
そんな人たちが集う場所が、関西文学サロン月曜会。
読書会に参加する人たちのベクトルは、多少の差はあれど方向性はきっと同じだと思います。
「他人の意見を否定しない」ルールがあるから、語れる自信がなくても大丈夫。
お互いを尊重しあって、皆が楽しく語り合える場を皆で作っています。
興味が湧いたら、気軽にご参加ください。
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次回の関西文学サロン月曜会の開催スケジュールは次の通りです。
課題本:ボルヘス『伝奇集』
開催日:2019年4月6日(土)
開催場所:ラポーティア
(大阪市西区新町1−14−21 大阪ひびきの街 ザ・サンクタスタワー1F)
受付開始:16:30
読書会:17:00〜19:00
懇親会:19:00〜21:00
今度のドレスコードは「幾何学」です。
会場は今回と同じですが、きっと今回とは雰囲気の違った読書会になると思います。
これから初めて参加される方も、既に参加されたことのある方も、奮ってご参加ください。心よりお待ちしております。
文:taisho 写真:いぐち、パキスタン