猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2019年4月20日(日) 読書会16:00~ トークイベント18:25~ 懇親会19:30~21:30
- 特別イベント「写真の読み方」ゲスト飯沢耕太郎 at 写真集食堂めぐたま
今日は「写真集食堂めぐたま」さんで「写真の読み方」読書会&飯沢耕太郎さんのレクチャーイベントです!
課題図書は写真評論家である飯沢耕太郎さんの三冊。写真の歴史を辿る新書「写真美術館へようこそ」、私写真の本質を抉る書き下ろし「私写真論」、写真を見る-考えることを解いた「写真的思考」です。イベント後半で飯沢さんのレクチャーがあるとはいえ、同じ著者の課題本が三冊あるのはなかなか珍しいかも。
更に、今回の読書会の特色は、めぐたまさんにある写真集を一人一冊選ぶということ。
そもそも「写真集食堂めぐたま」さんは2014年にオープン。飯沢さんが蔵書する5,000冊を超える写真集を自由に閲覧できるのが特徴です。(場所がわからなくならないように、プラスチックの板を挟むことで閲覧させて頂けます)
壁を覆う5,000冊の写真集、そこから自分が惹かれた一冊を選ぶ。つまり、課題図書について語りつつ、自分が選んだ写真集について語りつつ、後半の飯沢さんのレクチャーに続くという、めぐたまさんでしかできない読書会となっている訳です。
みなさん真剣に選んでますねー!もともと大好きな写真家の一冊でしょうか‥?その場でピンと来た写真集でしょうか‥?
さて、いよいよ読書会スタートです。今回は課題本ごとのテーブル分けではなく、それぞれが交じり合った形となっています。
こちらのテーブル。選んだ写真集について語られてます。ある方が選んだ写真集には老人の右手が写っています。その先には絡み合った木の幹、根っこが写っている。写真1枚だけを見るのではなく、写真集として編まれていることにより、つながりや抽象的な意味を想像させられる、と語られていたのが印象的でした。
こちらのテーブルでは、たまたま篠山紀信さんの写真集を2人の方が選ばれていました。同じ写真家でも、被写体によって、また写真の撮り方によって受けるものが全く違う、という話で盛り上がっていました。
それぞれの議論や意見が盛り上がる中、飯沢さんが各テーブルを回ります。飯沢さんが本当に書きたかったという「私写真論」。啓蒙的に写真の歴史を書いたところサントリー学芸賞を受賞し、その反響の大きさに驚いた「写真美術館へようこそ」……それぞれの選んだ写真集についての飯沢さんのコメントにも聞き入る皆さん。
その写真家だったら、この写真集も面白いよ、と、ひょいと飯沢さんが別の写真集を持ってこられたりするのですが、なんと、5,000冊の蔵書の場所を記憶されているようなのです。飯沢さんの頭の中はどうなっているのでしょうか!?縦横無尽に繰り広げられるワールドに、圧倒される私たちなのでした。
さて、読書会タイムを経て、いよいよ飯沢さんのレクチャーの開始です。画家の補助用の道具であった「カメラ·オブスクラ」、この写真機の先祖とも言える装置の話から、1839年に発明されたダゲレオタイプに、世界最初の写真集についてのお話……猫町倶楽部主催者のタツヤさん自ら写真を持ってアシスト!
そして、飯沢さんが非常に影響を受けた写真家、ダイアン·アーバスや荒木経惟について。個人的には、荒木経惟さん「センチメンタルな旅」の解説が圧巻でした。有名な、妻·陽子さんが木船に横たわる構図についても、今まではただ雰囲気を感じ取るのみで終わっていましたが、その構図や意味するもの、また後の写真集で同じ構図が再度繰り返されることについて聞くと、鳥肌が立つような感覚に襲われました。
写真、そして写真集、恐るべし。写真の誕生から現代まで、息もつかせぬ1時間のレクチャーなのでした。
さて。
「写真集食堂めぐたま」さんは、写真集もさることながら、そのお料理が有名な食堂なのです。めぐたまさんのホームページにはこう表現されています。“なんでもありのタフでやさしい太っ腹料理”…レクチャー後の懇親会、そのお料理はこちらです。
大山鶏の唐揚げ!
たけのこご飯!
きのこ研究家でもある飯沢さんに敬意を表し(!?)、しめじのサワークリーム炒め!
しみじみと食べ物の美味しさとパワフルさを感じることができるお料理の数々…。
美味しすぎる!感動!そんな言葉が方々から聞こえてくる懇親会なのでした。
被写体に秘められているものを引き出す、写真。写真と写真を編むことにより、ヒリヒリするような感覚を突きつける、写真集。その緊張感と対のように、人を暖かく、元気にする、お料理。何だか不思議な興奮に包まれながら読書会&レクチャーイベントは終了するのでした。
文責 おかとも 写真 真珠