猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2019年8月4日(日) 受付開始13:30 読書会14:00~16:30 懇親会17:00~20:00
- 第115回 東京文学サロン月曜会 永井荷風「つゆのあとさき」
猫町倶楽部が主催する夏の風物詩「浴衣読書会」が今年も8月4日(日)に東京の清澄庭園で開催された。今年の課題本は永井荷風「つゆのあとさき」銀座のカフェーを舞台に、たくましく生きる女給の主人公と軽薄な男たちの様子を描いた本作では、どのような読書会が展開されたのか。当イベントの司会を終えたばかりのiKen氏に話を伺った。
浴衣読書会、今年も無事終了しましたね!お疲れ様でした。
「お疲れ様でした!34℃を超える猛暑のなか、51名の参加者に集まって頂きました。」
猫町倶楽部の文学サロン月曜会では毎回ドレスコードが設定されるのが特徴ですが、今回は年に一度の浴衣読書会ということで、参加者のハードルも少し高かったのではないでしょうか?
「確かに『浴衣だから参加しない』という意見も聞こえてくることはあります。普段は段ボールとかでドレスコード作れば最悪どうにかなりますけど、浴衣は段ボールじゃ作れないですから。ただ、今回は事前に猫町のmixiコミュニティで浴衣を買いに行く初心者向けツアーを企画するなど、参加のハードルを少しでも下げられないかと試行錯誤してみました。」
※運営注意・ドレスコードを段ボールで作る人はほとんどいません。
猫町倶楽部では参加者の交流の場としてmixiを利用しているとは伺っていましたが、そのような使い方もあるんですね。でも今回の読書会は、初参加の方はあまりいらっしゃらなかったのではないですか?
『浴衣読書会だから行ってみたい』という需要があるのも実感しています。みんなで浴衣着て集まるのって、お祭りか花火大会がほとんどだと思うんですけど、その非日常性が魅力の一つになっているのではないでしょうか。」
読書会はどのような話題で盛り上がったのでしょうか?
「主人公である君江のキャラクター性に関する話題が多かった印象ですね。リアリティーが無い、生きている感じがしない、絵が見えてこないといった意見もあれば、たくましい性格や性に奔放なところを羨ましい(?)とする意見もありました。他にも君江と対照的な存在である鶴子が好きという意見も多かったですね。」
読書会というと、専門的な文学論が語られるのかと思っていたのですが意外と通俗的というか、そんな「好き嫌い」で語って良いんですね。
「そこが猫町倶楽部の読書会の特徴ですね。『相手の意見を否定しない』という基本ルールさえ守られれば何を語ってもOKです。『今回の課題本つまらなかった』なんて意見は毎回必ずといっていいほど聞こえてきます(笑)。あと話がどんどん脱線していって、デートは割り勘か、どこまでごちそうになるかなどと言った話題で大盛り上がりしているテーブルもありました。」
女給が常連客に芝居や食事につれて行かれるくだりから脱線してですかね。
「カフェーとは言うけど、ほぼ現代のキャバクラですからね。港区OLのパパ活SNSも100年後には文学的価値が出てくるかもしれませんよね。そんな脱線した話題も出てひとしきり盛り上がった後は、清澄庭園を読書会の班ごとに散策してまわりました。16時前でまだ暑いかと思ったのですが、池の周りは思ったよりも温度が高くなくて歩きやすかったです。浴衣を着ての庭園散策は夏の良い思い出になりました。」
浴衣で庭園を歩くのはなんとも風流ですね。散策の後は、休憩を挟んでベストドレッサー賞の選定と発表ですね。
「読書会の班から1名を多数決で選定したのですが、みなさん本当に素敵で、母親や祖母から受け継いだ浴衣を着てきている方や、課題本の内容に掛け合わせた柄を選んで来た方もいらっしゃいました。」
男性の方は受賞しなかったみたいですね。
「やっぱり浴衣読書会は女性が強いですよね。女性の華やかな柄が多いのに対して、男性の浴衣は地味目になりがちですから。もっと男性陣も紺や黒のシックな浴衣だけでなく色々チャレンジして欲しいです。派手でなくても、ベストドレッサー賞はそこに至るストーリーが語れると強いです。」
さすが、ドレスコードにはうるさいですね。
「今回も派手で個性的な浴衣を新調しましたよ。ドレスコードにハマると猫町がもっと楽しくなるのでオススメです。」
その後、同じ会場で懇親会も催されたのですよね。
「会場を移動しなくて良いのが最高ですね。食べ物も揚げ物や点心、フィンガーフードが並べられ、アルコール・ジュースも自由におかわりできるんですよ。3時間たっぷりお話出来たのが良かったですね。」
浴衣でやる懇親会は楽しそうですね。
「1時間半たったくらいで席替えも兼ねて、テーマトークテーブルという話題を指定した席を設けて、違う班の人とも交流出来るような工夫もしました。」
どんなトークテーマが設定されていたのでしょうか。
「一つは定番の『話し足りんテーブル』といって、読書会で課題本について話し足り無かった人達が集まるテーブルです。もう一つが実験的企画だったのですが『カフェードンファン』という作中に出てくるカフェーの名を冠した登場人物なりきりテーブルを作ってみました。」
圧倒的に『カフェードンファン』が気になるのですが・・・
「登場人物の君江や清岡になりきってトークするテーブルというていで、女給さんとお客さんごっこをしようと思ったんですけど、みんな設定を上手く演じきれず気づいたら普通の飲み会になってました。」
なるほど、キャバクラごっこ!チャラいですね。
「チャラくはないですよ。他にも主催のタツヤさんを中心とした『恋愛・結婚』をテーマにしたテーブルも大盛況でしたし。」
いや、やっぱりチャラいじゃないですか!!
「まぁ、読書会と聞いてイメージする感じからするとチャラチャラしてるかもしれませんね。『文学サロンのくせにチャラチャラしやがって』なんてお叱りを受けることもあります。でも文学って結構チャラチャラしてるでしょ。あの人気作家の【自主規制】さんなんて【自主規制2】じゃないですか。」
開催レポートで【自主規制】が入るなんて前代未聞ですよ・・・
「ごめんなさい。お酒が入っているもので・・・でも、猫町の良いところはしっぽり語り合いたい人はしっぽり語り合えるし、ワイワイしたい人達はワイワイできる懐の深さですからね。」
いい感じにまとめようとしないで下さい(笑)。懇親会、さぞかし盛り上がったのでしょうね。
「後半テンション上がってしまって、懇親会の最後の締めは司会の私が『夏だ!浴衣だ!』と叫んだら皆に『猫町だー!』と叫んでもらうコール&レスポンスで締めました。」
そこは浴衣だし、一本締めで締めればいいのに、ちょっとチャラい通り越してブッ飛んでますね。
「ちょっと馬鹿っぽくて楽しかったですね。いいじゃないですか、夏なんだし。」
夏、ですね。
「来年は、浴衣読書会じゃなくて某歌姫の暴露本を課題本にナイトプールで水着読書会なんてどうでしょう。」
それは絶対ダメです。
インタビュー:iKen 写真 タカハシ