猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2016年11月26日 16時30分から
- 金沢猫町倶楽部 第14回 村上春樹『風の歌を聴け』
「完璧な読書会などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
そんな風に始まったとか始まっていないとか(始まっていません)
第14回 2016年11月26日(土)、お馴染み片町のfull of beansにて
記念すべき第14回金沢月曜会定例会を開催いたしました。
11月の課題本は「風の歌を聴け」(講談社文庫)(著者: 村上春樹)です。
最近変化球ばかりの選書でしたが、今回はみんな大好き(もしくはその逆)の村上春樹です。
村上春樹は批評や批判に対して、否定も肯定もしない。
ただあいまいにうなづくだけ、なのがあらがえない魅力ですね。
あらすじを書くと
1979年の夏、大学生だった僕が神戸に帰省して友人の鼠とビールを飲んだり、女の子と会ったりする物語…
という形なのですが、超有名作だけに特にあらすじは必要なかったですね。やれやれ。
読書会の前にはリーダー兼受付兼会計兼ファシリテーターが
本のあらすじのおさらいや話題になりそうなポイントや疑問を考えています。
そのため、初めての方が参加していても、安心してご参加いただけます。
ちなみに今回の参加者の内訳は
男:女比は5:1
居住地別では石川:富山:神奈川が4:1:1でした。
神奈川から二か月連続で遠征さんありがとうございます。
初対面の方も毎回多くいらっしゃいますので、
まずはお互いの自己紹介をしてから読書会スタートです。
今回は、最近受けた衝撃的な話し。
抜歯を機会に断酒した話や、tricotが出るライブに行って出られなくなりそうだった話、
確実に読んだ本の内容を思い出せないなどの話など盛り上がりました。
今回は、村上春樹の「風の歌を聴け」です。
生粋のハルキストさんはいらっしゃらなかったのですが
あれも読んだ、これも読んだ、や、かつて経営していた喫茶店のメニューが出てくるなど
みなさん村上春樹にはひとかたならぬ思い入れがあるのですね、良くも悪くも。
(誰かが「マイペースないけすかない野郎」と評したとかしないとか)
いまでこそ当たり前になっている村上春樹の文体も処女作の本作で既に荒削りながら形作られていたのですね。
難解な章の立て方、小説の中で小説を書くと言う入れ子構造、一行目から既に村上春樹館満載の文体と
本作品を構成する要素は様々なのですが、まずは読んで欲しい一冊です(私見です)。
まずは、何度も登場する「タバコとビール」から話が始まりました。
一般的に言って人生の最後のモラトリアム、いわゆる青春期の通過儀礼でもあるような
退廃的な生活感(大学生が昼ごろ起きて、タバコ吸ってだらだらして、ビール飲んで寝るみたいな)が
倦怠感と既視感たっぷりに描かれており、みんなその時期の思い出が頭の中によぎったそうです。
つまり、この作品を読むと、以前この作品を読んでいた頃を思い出す、というような。
懐かしい気持ちと自分内なる気持ちが交差して、切なくなった方もいたようでした。
また、内容はもちろんのことですが、その特徴的な文体に惹かれた方も多くいたようでした。
「私の正義はあまりにあまねきため」(P.084)という表現は、みんな大好きになったようです
(懇親会でも何度も使われていました笑)
文章の中で登場する会話のシーンも、音楽のように流れる会話は文章的でもあり、
実際にはこんなやりとりは成り立たないのでシニカルでもある、なんて素敵な意見もありました。
ミュージカル調ってことなんでしょうかね。
加えて、参加者の中からは「村上春樹の特徴的な文体は、既にテイストが出ているが、また固まる前なので
「嫌さ」が幾分かマイルドになっている」などの後の作品から振りかえった意見を見られました。
「ノルウェイの森」や、石原千秋著の『謎とき 村上春樹』など、関連著書が多かったのも
村上春樹ならではの特徴だと思います。
やっぱりみんな一冊だと腑に落ちなくて、納得するために他の本も読んでしまうのかなぁ(私見です)。
今回も自分が一人で読んでいたら決して思いつかない話にたくさん出会えました。
ありがとうございました。
猫町倶楽部唯一のルールは「他人の意見は否定しない」です。
これさえ守っていただければ話す内容はどこまでも自由なので話題は尽きません。
読書会が終わるとドレスコードの紹介です。
今回のテーマは「80′s」ということで、
大学生風ファッションや、チェックのシャツにタートルネック、
プロデューサー風のカーディガン巻き、ベースボールキャップ、など勝手に80’sに浸りました。
パチリ
懇親会は、大学生みたくビールをピッチャーで頼んだり、ジャックダニエルのハイボールをみんなで飲んだりしました。
次回の定例会は12/17(土)、ミシェル・ウエルベック「ある島の可能性」(河出文庫)です。
みなさまのご参加お待ちしております。
どっとはらい
文 ふくしげ(「僕は・君たちが・好きだ」)
写真(撮影) ふくしげ