猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017年3月11日(土) 14:00~20:00
- 東京藝術部 読書会&レクチャー企画 ボブ・ディランを1日で知る!『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』ゲスト:萩原健太
「偉大なるアメリカの歌の伝統にのっとって、新しい詩の表現を創造したこと」という選考理由によって、2016年のノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。
70を過ぎた今も世界中でツアーを続け、今年3月には3枚組ものアルバムを発売する精力的な活動を続けながらも、今だ多くの人には遠い存在であるディラン―そんなイメージを更新するためにも、東京藝術部では音楽評論家の萩原健太さんをお招きしてボブ・ディラン読書会&レクチャーを開催しました。
課題本は 萩原健太著『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』(ele-king books)とお勧めのCDを聴いてくるというもの。
会場は東京の寂しき4番街、神保町のレンタルスペースMACRIで開催。
まずはミスター・タンブリン・マン、萩原さんからご挨拶。
開催日が3月11日の為、東日本大震災の萩原さんの呼びかけで全員で黙祷を捧げました。
そして萩原さんを囲んでの読書会。
参加者はボブ・ディラン通から初心者まで、それぞれの著書や音楽の印象を語り合いました。萩原さんの音楽評論家として気をつけることとして、色々な人に音楽との最初の出会いに大いに影響を与えるので、一次情報の事実記載にはこだわるというの点は、非常に印象深いお話でした。
#猫町倶楽部 音楽評論家の萩原健太さんをお招きしてのディラン入門読書会を開催。課題本は『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』 萩原さんも読書会に参加
— 山本多津也@猫町倶楽部 (@tatsuya1965) 2017年3月11日
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#猫町倶楽部 『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』 読書会 萩原健太さんも読書会に参加 pic.twitter.com/hVGVyLY2Ms
— 山本多津也@猫町倶楽部 (@tatsuya1965) 2017年3月11日
中にはお気に入りのボブ・ディランのレコードを持参する参加者も。萩原さんが”ディラン初心者はまずこれを聴け!3作品”のうちの1つにも選ばれた、70年代の傑作『血の轍』。1曲目の「ブルーにこんがらがって」はディラン代表曲のひとつです。
この日の読書会は決して人は多く集まりませんでしたが、くよくよするなよと言わんばかり、参加者の熱気の高い盛り上がりになりました。
続いては、お待ちかねのレクチャー。今回はレクチャーからの参加募集を受け付けたこともあってか、会場内の密度も高まってきたところ。ボブ・ディランの音楽家としての出発点から現在までを、萩原さんの膨大な資料を読み解きながらも、新たなボブ・ディランを面白くかつ分かりやすくご説明頂きました。
また萩原さんが厳選されたライブ映像やPVもいくつか流されました。
紹介されたのはウディ・ガスリーの影響下にあったフォーク期の演奏や2001年のアカデミー賞セレモニーでのライブ中継、映画化もされたThe Bandのラストコンサート、The Last Waltzに出演した時のパフォーマンスなど。
特に、「音楽家はなぜか映画や映像制作にはしる」というコメントのもと、ボブ・ディランが1985年の東京を舞台に映画タッチで制作された曲や、その延長線上に政策された2015年のPVは印象的でした。
Bob Dylan – Tight Connection To My Heart (Has Anyone Seen My Love)
Bob Dylan – The Night We Called It A Day
最後には、「このテンションのまま活動していたら、この人死んじゃうんじゃないかと思った」と言われる程の、60年代にフォークからロックに転向した直後、観客から「ユダ!」と叫ばれた時の演奏である「ライク・ア・ローリング・ストーン」のライブ映像全編を観賞し、さながらライブ会場で観る様な感覚。ボブ・ディランを浴びる 1日の素晴らしいクライマックスとなりました。
Bob Dylan and The Band – Like A Rolling Stone (rare live footage)
レクチャー後は風に吹かれて近くの神保町の中華料理屋で懇親会。まずは主宰のタツヤさんから乾杯のご挨拶。懇親会では、ボブ・ディランの話から音楽、文学、建築、映画など、多岐にわたります。東京藝術部の懇親会は、タツヤさんも驚くほどの盛り上がり。誰もがそれぞれの分野について初心者ながら、好奇心の強さからどんな話題でも話せる自由さが東京藝術部の強みです。
今回のボブ・ディラン企画を通じ、萩原さん、参加者の方がご指摘されていた通り、誰かのフィルターでのボブ・ディランでなく、自分なりのボブ・ディランを探してみるよいきっかけになりました。時代は変るし人も変わる。ディランのイメージも、人それぞれに変わっていくし、それでいいのだという後押しを受けたような思いです。
次回は4/8(土)に待望の音楽評論家、鈴木淳史さんのレクチャー付きクラシック鑑賞企画です。鈴木さんレクチャー後にマーラーの交響曲 第1番 ニ長調「巨人」をシルヴァン・カンブルランと読売日本交響楽団の公演を聴きます。次回の東京藝術部もお楽しみに。
http://www.bookreading.nekomachi-club.com/schedule/42514
文:麻子、次郎
写真:麻子