猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2017年11月12日(日) 16:30~19:00読書会、19:00~21:00懇親会
- 東京文学サロン月曜会第二会場「駒井組」第5回 安部公房「砂の女」
「世界文学」とはなにか?
光文社古典新訳文庫 創刊編集長 駒井稔氏の選書による読書会 それが東京文学サロン第二会場「駒井組」。
今宵も、大人の街=銀座から、世界文学を巡る文学の旅に出かけます。
平成29年11月12日(日)、晩秋の冷たくも心地よい晴天の銀座で第5回定例会が開催されました。
今回の課題本は安部公房「砂の女」。
初回課題本 三島由紀夫「美しい星」から出発し、アフリカ、フランス、アメリカと世界を一周、一旦日本へ戻ってきました。
16:30、読書会の冒頭、駒井さんから選書理由、特に、世界文学としての安部公房作品についてご説明を頂きました。
・読者を強力に引き込む文章構成力、描写のリアリティがある一方で、世界中の読者が時代、地域を越えて自らにひきつけ楽しめる普遍性。
・20世紀文学がようやくたどり着けた、このような「世界文学」の到達点に1960年代の日本人作家が早くも達していた驚き。
・当時日本のムラ社会の閉鎖性を念頭に共感されていた作品が、現代の社会状況の中でも新たに読み解ける面白さ。
・晩年の作家が病気のため内向的になり、結果として90年代以降の日本社会が崩壊していく中で忘れ去られた面があるが、日本・アジアのエキゾティズムに依らない現代文学としてノーベル文学賞も意識されていたこの作家の作品を「イマ」読むことの意義。
このあと各テーブルで進行役(「ファシリテーター」)を決めて頂き読書会がスタート。
猫町では、参加者全員が協力して楽しい読書会をつくります。【他人の意見は絶対に否定しない】、これが大事なルール。
進行役を中心に、みんなでどんどん話を膨らませます。感想、疑問点、注目したポイントのほか、課題本にちなんだ書籍、映画、音楽、旅行などのリコメンド、参加者の思い出ばなし。本を通じて参加者同士が知り合うことも読書会の醍醐味です。
世界文学の旅では、参加者の皆さんが「水先案内人」。円滑で安全なご旅行をサポートするため、今回から各テーブルに「テーブル案内表示」と「参加者の皆さんへのお願い」を配置させて頂きました。
いよいよ読書会がスタート!各テーブルでは、様々な切り口で意見が交わされます。
・脱出困難な究極の状況に置かれ、次の展開に強く引き込まれた。
・(リアリティ溢れる描写ゆえ)男女の性が艶めかしく、刺激的過ぎると感じる。(逆に楽しんでいる参加者も?)
・「砂」が象徴的な作品。砂という環境に埋没した男女、村人が我々からは異常な存在に見えるのも理解できる。人間の存在、心の内面を考えさせられる奥深い設定。
・トカゲなど強い生き物を砂漠に誘い込み捕食してしまう昆虫「ハンミョウ」。外面の美しさ、妖しさと強かさが作中の女とつながって絶妙。
・通信手段が限られた時代、個人と世界の関係が途切れ自らを見失う、「失踪」する危険性、危うさを痛感。反面、現代の情報化社会でも、情報過多や地理的、制度的な「穴」に落ち込む恐ろしさがあるのではないか。
・社会主義とよく似た世界が描かれており、男をはじめ、登場人物の行動・心理を社会科学の観点から分析できて面白い。
・文章構成が巧みで、哲学的な面があり知性的である反面、(自分には)人間の感情を過度に抑え込み過ぎている印象もある。
このほか、実際に砂漠を旅した経験談、作家が傾倒した哲学者ハイデカーの影響、映画化作品の印象、関連するリコメンド作品なども。幅広い世代が参加する「大人の猫町」駒井組ならでは。話題が尽きません。
駒井さんも各テーブルをまわりテーブル毎の関心に即した世界文学をご紹介。安部公房作品としては、有名な「箱男」、「他人の顔」などでなく、むしろ「燃え尽きた地図」、「第四氷河期」をご推薦頂きました。
読書会の最後はベストドレッサー選出です。駒井組では、大人街にふさわしくお洒落をして参加して頂けるドレスコードを設定しています。
今回は「砂の女」に因んで「サンドベージュまたはスマートカジュアル」。
ショールで砂に閉じ込められた作品世界を表現したファッションや、サンドベージュと他の色の絶妙なコーディネート、アクセサリーや小物で登場人物をイメージさせるなど、フォーマルを基本としつつも様々な工夫を楽しんで頂きました。お着物で参加され、裏地で課題本の妖しい世界を表現されている方も。
ベストドレッサーの皆さんには、猫町特製しおりのほか、駒井さんから副賞として、何と!光文社古典新訳文庫の話題作をプレゼントして頂きました☆☆
受賞者のみな様、おめでとうございます!駒井さん選書のウイナー本でも世界文学をお楽しみ下さい。
19:00からは同じ会場で懇親会です。「駒井組は落ち着ける」というお褒めの言葉を頂けるようになりました。駒井さんを中心に参加者の皆さんのご協力があってのことと思います。
更に、おいしいお酒やお料理、任意参加ですが3次会まで同じ会場で、終電まで過ごして頂ける参加者が増えています。
駒井組の噂を聞きつけて、翌日の仕事が気になる日曜夜ではありますが、名古屋、大阪など他の分科会からも参加して頂いています。
夜が更けて3次会がはじまりました。この頃になると、引き続きお酒を楽しむ方、デザートを注文される方とわかれます。会場には、有料ですが、おいしいスイーツもたくさんあります。是非一度、3次会まで参加して味わってみましょう。
最後になりますが、今回も参加者の皆さんにはおおいに盛り上げて頂きました。わたくし、サンドベージュにとって初司会でしたが、楽しく進行できました。
次回は、新年1月14日(日)、トニ・モリスン「青い眼が欲しい」です。
サポータ一同、皆さまの参加を心よりお待ちしております。
(画像:ひとみ、真珠、レポート:昭和歌謡でお馴染みの「サンドベージュ・マッチュ」)