猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2018年5月12日(土曜日) 受付開始 16:30 読書会 17:00~19:00 懇親会19:00~21:00
- 第39回 関西文学サロン月曜会 田中小実昌『ポロポロ』
「物語は、なまやさしい相手ではない。なにかをおもいかえし、記録しようとすると、もう物語が始まってしまう。」
最初に断っておくが、これは、ぼくの読書会の物語だ。
あなたの物語は、あなた自身で確かめて欲しい。
賑やかな公園の前を抜けると、店の入口に人が立っていて、ぼくは、おや、と思った。
今日参加する猫町倶楽部の読書会では、一つのカフェを貸し切って読書会をするらしい。
カフェ「ラポーティア」の入口を抜けると、そこにはお洒落で落ち着いた雰囲気の中で、読書会の開始を待ちながら談笑する人たちの姿があった。
入口で受付を済ませると、ぼくは自分の参加するテーブルを案内された。
ここでは5~7名程度のグループに分かれて、課題本について語り合うらしい。
彼女はこのテーブルのサポーターだと言い、入口の人と同じくこの読書会の進行を担当する役回りなのだそうだ。
初めて参加するぼくにはなんのことだかよくわからなかったけれど、ともかくぼくは彼らに任せていればよいようだった。
定刻になる頃にはカフェには30人を超える人たちが集まっていた。
(会が始まってから分かったことだが、そのうちの10人ほどは初参加の方だったらしい。)
最初に読書会の約束事などの説明があって、田中小実昌『ポロポロ』読書会がスタートした。
さて、正直なところ、ぼくはこの本についてどう語ればいいかよく分からなかった。
作者はぼくが物心ついたころには亡くなっていて、この読書会で初めて知ったような作家だったし、ヒサンな従軍体験をしている割にあまり辛そうな感じがしない、この不思議な読後感をどう表現すればいいか迷っていた。
読書会は、まずおたがいに自己紹介をしあうところから始まった。
好きな本のジャンルや読書会の参加回数、『ポロポロ』についての簡単な感想などをそれぞれが順番に語っていった。
実を言うと他の人がどんな自己紹介をしていたのか、あまり覚えていない。
自分の自己紹介で何をしゃべろうかということで頭がいっぱいだったのだ。
ただ、自己紹介はとても緊張したけれども、終えてみるとすっきりして、少し気持ちが楽になったような気がした。
「『ポロポロ』って結局どういう意味だったんでしょうね?」
ぼくもよく分かっていなかった。ただ、この本のタイトルによく似合っているなとは思っていたけれど、この言葉が何なのか、ぼくの結論は出ていなかった。
「ポロポロは言葉にならない高ぶりや悲しみや怒りが入り混じった祈りではないか」
「戦争体験を祈りの言葉として書いているような気がする」
「考えるな。感じろ!と言われているように感じた」
「この本すべてがコミさんのポロポロだったのだと思う」
ああ、なるほど。そういう風に語ればいいのか。
それぞれが思い思いに自分の解釈を語っていく中で、ぼくもその対話の中に自然と参加していた。
「課題本を読んでくるだけでOK」「他人の意見は否定しない」
最初に説明されたときはピンと来なかったが、初参加でも話しやすいのはこの約束事があるからなのだろう。
読書会の時間は、あっという間に過ぎた。
筆者が指摘する「物語」論について話し合ってみたり、
この本が出版された1970年代の戦争認識に思いを馳せてみたり、
他の戦争文学や映画などと比べてみたり…
話が途切れそうなこともあったけれど、皆で読書会を楽しもう、話そうとしているうちに、また次の話題で盛り上がっていたように思う。
読書会の時間も終盤に入って、このテーブルのベストドレッサーを決めることになった。
今回の読書会にドレスコードがあることは聞いていたが、
今回は「あるがまま」とのことだったので、ぼくはいつも通りの恰好で来た。
けれども、皆「あるがまま」をいろいろな解釈で着飾っていて驚いた。
「一番大事にしているプレゼントを身に着けてきた」
「好きなもの全部盛り」
ベストドレッサーに選ばれた人たちともなるとそれぞれに工夫を凝らして楽しそうであり、ちょっとうらやましくなった。次は何か凝ってみようか…
最後に皆で記念撮影をして、読書会は終了、懇親会が始まった。
料理が運ばれ、お酒も飲みながらしばらく気ままなフリートークを楽しんだ。
その後皆で席替えをして、ほかのテーブルの人たちとも話をすることが出来た。
席替えの際には、テーブルごとに「旅行」「グルメ」「『ポロポロ』をもっと語りたい」という風にテーマが決まっていて、
自分の好きなものについて語ることが出来たのがとてもありがたかった。
懇親会もいつの間にか解散の時間となっていた。
共通の趣味を持つ人たちとの会話は楽しく、まだまだ話したりなかったし、
今回話せなかった他のテーブルの人たちとも話してみたいと思った。
「猫町倶楽部の読書会はまず3回続けて参加してみてください。」
最初に司会の人が言っていた意味はこういうことなのだろう。
次回の読書会は、
6月9日(土)、今回と同じ会場のラポーティアにて、
江戸川乱歩『江戸川乱歩傑作選』
をテーマに開催されるらしい。
今回の読書会の様子なら、江戸川乱歩や推理小説に詳しくなくても大丈夫そうだ。
まずは手に取って読んでみようと思う。
皆満足そうな顔で帰っていく。mixiで友達申請しあう姿もあちこちにあった。
まだ夜の9時だから今から3次会に行くという人たちもたくさんいた。
うーん、どうしようか。ぼくはうなった。
文章:taisho 写真:しん、パキスタン