猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2019年02月23日(土) 17:00~19:00
- 「福岡文学サロン月曜会 第36回『ヴェネツィアの宿』須賀敦子
今回から場所を変えまして、本のあるところ「ajiro」にて定例会を開催することになりました。
本のあるところ「ajiro」さんは、福岡で短歌やカフェ本等様々な本を手掛ける出版社「書肆侃侃房」が運営するブックカフェで、2018年の12月に福岡・天神にオープンしたばかり。
その書棚の並びは読書欲をそそられるような選び抜かれた名作・珍作の山!
参加者の皆さんも平台や書棚の本を見て「ここの本、素敵ですね」と。
あまり一般の書店にないような珍しい本がたくさんあったので、つい参加者の方が揃うまでの時間、本を手に取ってしまうこともしばしばありました。
今回は福岡のみならず、長崎、大分と県外から参加された方がなんと半数も…!なんと須賀敦子さんの読書会があることで広島から来てくださった方もいらっしゃいました。
地元には課題本形式の読書会がなかなかないようなので、これは出張猫町の出番か、と考えたり考えなかったり…。
本日の課題本は須賀敦子「ヴェネツィアの宿」です。
「ヴェネツィアの宿」は、アントニオ・タブッキ等の翻訳で知られるイタリア文学者の須賀敦子さんの代表的なエッセイ集の一つです。
須賀敦子さんは1991年に61歳で「ミラノ 霧の風景」でデビューしてから1998年に亡くなるまで作家活動はわずか8年著作は5作と少ないながらも、没後20年経っても特集や全集が刊行される等、読書家にはファンの多い作家として知られています。
この「ヴェネツィアの宿」はデビュー作『ミラノ 霧の風景』、次の『コルシア書店の仲間たち』に続く三作目にあたり、前二作は著者のイタリアでの生活を元にしていますが、当作は、イタリア生活に加え日本で過ごした少女時代、家族関係をベースしたエッセイが主となっています。
今回の司会(ファシリテーター)より、猫町倶楽部の唯一のルール、「人の意見を否定しないこと」の説明をしました。
初参加の方もいるので、まずは各々自己紹介。
好きな本や最近読んだことのある本を各々紹介しあって場を温めたら、いよいよ課題本について踏み込みます。
須賀敦子さんの本は初めてという人が多かったですが、今回の「ヴェネツィアの宿」の全体を通しての感想を伺うと、
「まるで娘から父への書簡のような小説」
「最後までエッセイだとわからなかった」
「光や音楽、風景の書き方がとても美しい」
「何度も読み返したい小説」
と参加者にはとても好評でした。
ヴェネツィアの宿は、時系列はバラバラですが、主に日本で過ごした少女時代、学生時代、留学、結婚を含むイタリアでの生活の3つのパートにあわかれています。
戦前の生まれながら、ミッション系の学校、大学に進み、卒業後はイタリアに留学という華麗な経歴に「うちの家とは世界が違う」との感想も(笑)
この本の軸とも言える須賀敦子さんの父は、日本で有数の実業家に生まれ育ち文学的教養もあり海外留学経験も豊富。
須賀敦子さんは、少女時代に一時期愛人のいる京都の別宅に出奔し、自分と母を捨てたこの父親に複雑な思いを抱きつつも、強い影響を受けたことが、最後の章「オリエント・エクスプレス」等でわかります。
学生時代に父親の出奔を経験しますが、ミッション学校に通う須賀さんの周りには多くの個性豊かなシスター達がいました。
今まで家族でしかなかった父親と母親が見せる人間くささを垣間見ながら、少女から大人に変わる時間を通して、須賀敦子さんはシスター達やイタリアの文化、芸術、信仰に強い興味を持ち続けることになります。
議論の中で、「この本を読むと須賀敦子はキリスト教と切っても切り離せない感じがする」という声がありました。
また須賀敦子さんの文庫本の表紙の多くには彫刻家・舟越桂の彫刻が使われており、舟越桂の父・舟越保武も著名な彫刻家かつ敬虔なカトリック教徒です。
表紙の舟越氏の表紙しかり、須賀敦子さんの背景を理解するにキリスト教の知識はやはり必要なものかもしれませんね。
大学時代、イタリア留学のパートの話には留学や旅行等自らの人生経験に照らして活発な意見交換が行われました。
「芯の強い人。非常に現代的な感覚の持ち主」
「日本から離れることで、自分の中の日本が見えることがある」
「現在の女性の働き方問題がこの時代にもある」
バックハッカーの話、自分の留学の話、自分の親子関係の話…。
本の内容をあれこれ語る面白さもありますが、本の内容から自分自身の経験、人生を、自分だけではなく他人と、それも今日初めてあったかもしれない他者と共有することができる。
それが課題本形式、読書会のとても面白い所の一つで、今回も皆さんと素敵な時間を過ごすことができました。
さてさて、宴もたけなわ、ベストドレッサー賞の発表です。
今回のベストドレッサー賞は、「ヴェネツィアの宿」の舞台、イタリアで買った赤いハイソックス(男性用)~~~~!!!
どこに履いていけばいいか、ととまどいそうなデザインですね。
初参加ながら、ベストトレッサー賞の獲得、おめでとうございます!!
最後はみんなで集合写真。
次回の猫町倶楽部@福岡文学サロン月曜会の課題本、アメリカ文学の金字塔、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」です。
2019年2月23日(土)17:00〜19:00 懇親会もあります(読書会だけの参加もOK)
場所は、福岡市天神の「本のあるところ ajiro」にて。
*学生の方は学割もあります。
皆さんのご参加お待ちしております。
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