猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2019年04月06日 (土)
- 【名古屋藝術部】『マルセル・デュシャンとは何か』
明るい日差しのもと満開の桜並木を抜けてゆくと会場に辿りつきます。4月6日(土)
名古屋藝術部の読書会が藤が丘の「JAZZ茶房靑猫」で開催されました。
今回の課題本は平芳幸浩著「マルセル・デュシャンとは何か」、参加者は13名、初参加の方は2名でした。現代アートの元祖といわれるデュシャンの作品と人生、そして後世への影響がわかる決定版入門書です。一人のアーティストに焦点をしぼることで、読み進めていくうちに難解な現代アートの核心に近づいていける内容でした。4月頭の忙しい時期で少人数での開催でしたが、お互いの意見をじっくり聞いて話しあえる読書会になりました。
猫町読書会のルールはたった一つ、「他人の意見を否定しないこと」です。美術に興味はあるけど詳しいことは分からないという方、地元でも遠方でも気になる美術展は見にいくという方、大学時代に美術史を専攻していた方、美術関係の仕事をされている方、と美術についての知識も様々ですが、このルールのもと参加者の誰もが発言しやすい雰囲気が生まれます。それぞれの立場での感想や質問をきっかけに話が発展してゆき、自分では気づかなかった視点・論点・解釈などに出会う機会が生まれます。
さて、各テーブルではどんな意見が出たのでしょうか。
・デュシャンの「アートとは選択である」という言葉が印象的だった。
・彼の代表作である「大ガラス」の解説を読み進めるのに苦労した。解釈に正解はないし本に書かれている通りに作品を見る必要もまた無く、ただ見るだけで感動したり楽しめるものとは違い、現代アートは見る側に想像力・思考力を求めてくる。
・「網膜的な鑑賞」という概念が提示され、自分を含めて多くの人が美術館などで作品を見るときの一般的な鑑賞態度と、現代アートを見るときの鑑賞態度の違いを考えた。
・アートに対する価値観は、印刷や写真など複製技術の普及とタイミングで変化してきた。最近では3Dプリンタがそれに当たると思う。作家の技術の高さも評価対象だったが、作品自体が訴えるものが評価の対象になってきている。
・大学生が締切り数日前に取りかかって持ち込んだ稚拙な作品と、構想・製作に時間をかけて高度な技術で作り上げられた作品を、どちらも現代アートとして提示された場合にそれらとどう向き合うのか。
・アートの評価は難しい。多くの人は作品の取引価格や作家の知名度をあてにして鑑賞している気がする。
・他人に自分を規定されることを嫌い、そういったものと距離を取りながらも常にアートに関わり、傍流を歩んでいるようで最後には主役になっているデュシャン。それを淡々とおこなう知性・理性に感心した。
今回は途中でグループ替えもおこない、終了時刻いっぱいまで活発な意見交換が続きました。つかみどころのない印象がある現代アートについて、どのように理解すればいいか楽しめばいいのかなど話は尽きません。
読書会の後は場所を移して懇親会です。最近行った美術館の話、気になるアーティストや作品の話、読書以外の趣味や活動の話と、くつろぎながら盛り上がりました。
次回の名古屋藝術部読書会はコンテンポラリーダンスナイトです。愛知県芸術劇場シニアプロデューサーの唐津絵里さんをゲストにお招きして、サウンドバーJAPにて5月6日(月)に開催します。課題本は「コンテンポラリーダンス徹底ガイド」「バレエとダンスの歴史−欧米劇場舞踊史」「西麻布ダンス教室−ダンス徹底ガイド」の3冊からの選択制です。読書会とレクチャーのあとはDJタイムと、好評のコアタイムリブートとのジョイント企画です。コンテンポラリーダンスって何、と思っている方も是非ご参加ください。レクチャー付読書会は、ゲストの方から楽しく詳しくお話を聞ける貴重な機会です。お待ちしています。
文・写真:リュウセイ