猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。
- 2019年11月20日(水) 19:00~受付開始 19:30~21:00シネマテーブル 21:00~22:30懇親会
- 関西シネマテーブル 第31回 『真実』or『楽園』
師走が近づく2019年11月20日水曜日の夜、大阪心斎橋のラポーティアにて関西シネマテーブルの定例会が開催されました。
今月の課題映画は『真実』と『楽園』。いつもは課題映画が1つのところ、今回は2作品のうち、どちらか一つでも観ていれば参加できるという形での開催となりました。
この2作品、どちらも大・大・大注目な話題作ということもあり、参加された方の中には両方とも観たよ、という方も少なくなく、会場は熱気に包まれておりました。
『真実』は『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、初めて国際共同制作で手掛けた長編作品。
フランスを代表する女優、カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュが母と娘を演じ、愛憎の入り混じった家族の「真実」を描き出す話題作でした。
当日は『真実 特別編集版』を上映していた時期でもありましたので、通常版はもちろん、特別版だけみたよ、という方も、両方観たよ!という方も様々おられました。
もう一つの課題作品『楽園』は、「悪人」「怒り」など数々の著作が映画化されてきたベストセラー作家・吉田修一の短編集「犯罪小説集」の映画化作品でした。
小説好きの方はもちろん、綾野剛、杉咲花、佐藤浩市といった超有名キャストが出演していたこともあって、俳優さん目当てで鑑賞された方も参加しておられました。
未解決の少女誘拐事件をめぐるなかなかディープな題材ということもあって、皆様、真剣な面持ちで語り合っておられたのが印象的でした。
そして今回は、なんとゲストとして『楽園』の宣伝に携われた古野さんにも来ていただき、それぞれのテーブルに入っていただきました!
古野さんはお仕事として映画に携わっておられるというだけでなく、プライベートとしてもかなりの映画ファンでいらっしゃるとのことで、そんな公私共に映画のプロから聞かせていただけるお話は、目から鱗なお話ばかりでした。短い時間ではありましたが、一つ一つのテーブルで丁寧に参加者の方々と話をしていただけましたよ。
また、今回は開始前に参加者の皆さんへアンケートをお配りし、定例会終了後に回収、そして古野さんへ直接質問をぶつけてみる!トークショーの企画もありました。
そんな盛りだくさんな今回の定例会。参加者は26名で、初参加の方はそのうち3名でした。
また、全参加者のうち『真実』で参加された方は14名、『楽園』で参加された方は12名と、だいたい半分ずつの割合での開催となりました。
参加者の皆さんは6~7人程度のグループに分かれ、まずは簡単な自己紹介を行った後、課題作品について語り合います。
シネマテーブルでのルールはたった2つ。
1.課題映画を鑑賞していることと、
2.他の参加者の意見を否定しないこと
です。もちろん、「作品のここが納得いかない!」、「あのキャラクターのここが苦手!」等、作品について批判するのは問題ありません。
このルールがあるため、皆さん気持ちよく、思い思いに自分の感想を述べることができます。初参加の方も臆さず参加できる雰囲気作りを心掛けています。
では、各テーブルで盛り上がっていた話題を少し紹介していきます♪
こちらは『真実』のテーブル
●俳優陣の演技やロケーションについて
カトリーヌ・ドヌーブをはじめとする名優ばかりの出演作ということもあり、俳優陣の演技のすばらしさを語る方が多くおられました。
有名俳優はもちろん、特に話題に上がったのは、ジュリエット・ビノシュの子供、シャルロットを演じたクレモンティーヌちゃんの自然な可愛らしさ!
そして、カトリーヌ・ドヌーブが劇中劇で共演する役を演じたマノンさんの、スッと軸の通った美しさ!
是枝監督ならではの自然な子役演出、フランスの美しい街並みを映し出すカメラ演出に心奪われたという方も多かったようです。
●母親になることについて
この映画はカトリーヌ・ドヌーブ演じるファビエンヌの成長譚のように、多くの方が感じられたようです。
ワガママでチャーミング、まるで女の子のようなファビエンヌから、一人の母としての彼女の変貌ぶりには、是枝監督の過去作「そして父になる」を連想した、という方もおられました。
●母娘関係について
『真実』で描かれる母娘関係は、ある時は姉妹のように、ある時は良きライバルのように移り変わっていき、そこに共感したり感情移入できるかどうか、といった点が人によって様々でした。
また、この母と娘の間のシーンで度々問題にされる“演じること”自体への捉え方も様々でした。「彼女たちがお互いの関係を築く上で、互いの間に“演技”や“セリフ”をフィールターのように挟んで交流しているように感じた」「他者(母親、あるいは娘)との直接的な向き合えなさを感じた」という人もいれば、「そもそもこの母や娘にとっては、生活することと、自分(という役)を演じることがイコールの関係にあるように感じたので、“演じること”そのものが他者と向き合うツールとなっているのではないか」といった捉え方の人も。
自分と異なる捉え方を知れるのも、シネマテーブルの醍醐味でもあります。
様々な意見を素朴に話し合えたことで、母子関係、あるいは演技そのものの多面性に触れることができ、この映画についての理解が深まったように感じました。
こちらは『楽園』のテーブル
●俳優陣の演技について
綾野剛、杉咲花といった、今を時めく俳優陣が出演ということもあり、俳優陣の演技のすばらしさについて言及される方が多くおられました。
特に、柄本明さんのおじいちゃん、出戻りの幸薄奥さんについては「本当に田舎に居そうでとてもリアル!」とい盛り上がっておられました
●コミュニティの中の孤立について
この映画をとおして、社会の中でどのように所属し、生活していくかについて考えられた方が多かったようです。
村八分にされる善次郎の姿は辛く「心をえぐられた」「心に突き刺さった」等、ずんと胸の奥に重くのしかかるような印象を持たれた方が大半のようでした。
そして、こういう事は「この社会のなかに居ると、どこでも起こりうる事ではないか」「コミュニティの中で誰かを悪者にしないと辛くてしかたがないということも、普通に起こりうる構造ではないか」という意見もありました。
●タイトルについて
『楽園』とは正反対の内容の作品に、なぜこのタイトルなのか?についても議論が白熱しました。
特に、このタイトルを想起させるような、作品の終盤のあるキャラクターの台詞が印象的だった人が多くおられたようです
そして定例会後は、ここでしか聞けない古野さんへのQ&Aイベントが開かれました
映画『楽園』の制作裏話や、宣伝というお仕事の事について、皆様の質問アンケートから根掘り葉掘り聞いてしまいました!
時にはそんなことまで話してくださるんですか!という内容まで答えてくださり、会場はとても盛り上がりました。
定例会に参加された皆様だけにおススメする、今、そしてこれから観るべき映画についてのご紹介もいただきましたよ
本当にありがとうございました!!
惜しまれながら会はお開きに…。しかし話は尽きず、続いて、懇親会に突入いたします!
今回も9割ほどの方が参加されていました。
各テーブルでは、最近見た映画や公開を心待ちにしている映画、あるいは課題映画についてまだまだ話したりん!という人がテーブルに集まっておられました。
中には、最近食べに行った美味しいお店があって…といった話など、映画に関係なく自由にご歓談されているテーブルも。
もちろん、どんな話をしたらいいのかわからない…という初心者の方でも安心して懇親会に来ていただけるよう、「懇親会話題映画」というテーブルもございます。
このテーブルは毎回設定される「話題映画」を見てきた人が、懇親会の時に集まって意見交換をするテーブルとなっています。
今回の「話題映画」は『yesterday』。
課題映画の作品はどちらも現実的なストーリーでしたが、こちらは、売れないシンガーソングライターが事故にあい、目を覚ますと世界からビートルズがいなくなっていた!?という突拍子もないストーリー。
課題映画で描かれていた、胃がキリキリ、心が抉られるような現実とは対照的に、ビートルズ愛に溢れた、とてもハートウォーミングで、ある意味安心して(笑)観れる作品でした。
テーブルには、もちろんビートルズファンの方々が集まり、思い思いにビートルズ愛を語っておられましたよ!
シネマテーブルは年齢問わず、趣味を通して色々な人と出会える自由な社交の場です
ぜひぜひお気軽にお越しください♪
次回のシネマテーブルは、1月19日(日)開催となり、課題映画はありません。
なぜなら、毎年恒例の「年間ベスト&ワースト 2019」を開催させていただくからです!!!!
この一年間に劇場公開された新作映画の中から皆さんの「ベスト&ワースト」を発表する新年会企画となっております
詳細は↓からご確認ください♪
http://www.bookreading.nekomachi-club.com/schedule/63985
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
文:むー
写真:ジュリア