扉を開けると本の向こう側の世界が広がっていた。

猫町倶楽部とは、参加者が毎回課題図書を読了して集まり、
それぞれの気付きをアウトプットすることで学びを深め合う読書会です。

東京文学サロン月曜会[文学]

  • 2020年7月30日(木) 20:00~22:00
  • 【猫町オンライン】 文学サロン月曜会 カズオ・イシグロ『日の名残り』

7月30日(木)に東京文学サロン月曜会は、カズオ・イシグロ『日の名残り』のオンライン読書会を開催しました!
平日の夜にも関わらず、60名近くの参加者が集まり、読書会は大盛況となりました!

作品の舞台は1950年代のイギリス。
執事として勤めてきたスティーブンスが休暇をとり、ケントンのもとへ向かって旅をしながら回想にふけります。

長年仕えたダーリントン卿への敬意や、執事の鑑だった父が老いていくことに対する複雑な感情、女中頭だったミス・ケントンとの交流とすれ違い、……。
誰でも思い出を美化してしまうものです。
そのことはスティーブンスにも当てはまるでしょう。
そして、この物語はスティーブンスの視点から語られます。
彼の主観が織り交ぜられ、”不正確な語り手”によってストーリーが紡がれるのです。
クライマックスである、スティーブンスとケントンが再会したシーンでさえ、
「スティーブンスが数日前に会ったことを思い返す」という切り口で語られます。

参加者の意見・感想をいくつか紹介します。

_____
・ケントンはスティーブンスに友情を感じていたかもしれないが、
恋愛感情があったかは怪しいと思った。
・この日記に書かれていることは本当に起きたのか?
全部スティーブンスの妄想なのではないか?ケントンの言葉も妄想なのでは?
・実在しない地名が登場。ケントンの手紙の内容そのものの記載はないが、
スティーブンスがケントンは屋敷に戻りたいと解釈しているなど、
主観(もっといえば不正確な語り)が入っていると思った。
・一日目、二日目、……という構成となっているのに、五日目の記載がない。
ユダヤ教の安息日にあたるからではないか。
・偉大な執事であるには、主人も偉大であるべき。
しかし、ダーリントン卿は社会的には悪者になってしまった。
そのため、スティーブンスは偉大な執事でいられなくなり、
アイデンティティーの崩壊という危機に瀕していたのではないか。
・最後、スティーブンスが夕陽を観て後悔しながら涙を流すシーンに感動した。
正しい・間違っているでは測れないものがあると感じた。
_____
既に複数回『日の名残り』の読書会に参加されている方もいらっしゃり、
考察が深まった班も多かったのではと思います!

最後に集合写真をパチリ!


次回の月曜会は8月29日(土)太宰治『葉桜と魔笛』です。
猫町代表のタツヤさんお勧めの短編だそうです。

9月は三島由紀夫『仮面の告白』で3回開催されます。
日程は9月2日(水)、15日(火)、27日(日)です。
※東京月曜会の設営は27日となります。
さらに、9月13日(日)には駒井稔さんの『文学こそ最高の教養である』の読書会も開催されます。

また、猫町倶楽部では、新たな試みとして猫町ラウンジの運用を始めています。

猫町ラウンジとは、猫町倶楽部の読書会をより一層深く楽しむための、オンラインの活動拠点です。
※ラウンジに参加しなくても、個別の読書会、イベントには参加できます。
ラウンジに入会することで、オンライン読書会に定額で好きなだけ参加でき、
交流会などの課外活動も楽しめるようになります!

末筆ながら開催レポートを読んで頂き、ありがとうございました!
読書会でお会いできるのを楽しみにしています!

(文・写真:イノウエ、運営:東京文学サロン月曜会)

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